ゴルフ場に行きますと、広々としたフェアウェイに緑の芝が目に入ってきて気持ちの良いものです。プレーヤーも、雄大なコースを目の前にして、ショットの姿勢に入ります。ルーティーンの動作を確認して、ショットを打ちます。このとき、プレーヤーは打球方向に同伴プレーヤーがいないか確認すると思いますが、時には、あまり確認もせずにショットして他のプレーヤーにボールを当ててしまって怪我をさせてしまうようなことがあります。
最近扱った事件の中にも、同様の事故を起こし、他のプレーヤーの後頭部に打球を当ててしまった事件がありました。幸い、大けがには至りませんでしたが、当てられた方は、病院に行って頭部のMRIをとって、しばらく自宅療養したようですが、軽傷ですみました。
ところで、ゴルフプレー中に打球事故を起こしてしまった場合、そのプレーヤーにはどのような責任が発生するのでしょうか。
裁判例によれば、ゴルフ競技においては、硬質の小型ボールを用い、かつ、打球の速度が非常に速いため,打球が他のプレーヤーに当たった場合に重大な傷害を負わせる可能性があるので、プレーヤーがショットを打つ場合、自らの打球が他の同伴プレーヤー等に当たらないように、他の同伴プレーヤー等やその周囲の状況に十分注意を払うべき注意義務を負うとされています。もちろん、自分の技量がどの程度のものかということも自覚してショットをする際には注意すべきでしょう。したがって、このような注意義務を怠って、他のプレーヤーに打球を当てて怪我をさせた場合は、そこから生じた損害を賠償する責任があります。
ところが、前記の打球事故を起こした方は、ゴルフ保険に入っていませんでしたので、自己負担で賠償せざるを得ませんでした。被害を受けた方の怪我が大事に至らなかったことやゴルフ場運営会社も打球事故について保険契約をしていたおかげで治療費はその保険でまかない、打球事故を起こした方は治療期間に応じた慰謝料等の支払で切り抜けることが出来ました。
しかし、打球事故は当たり所が悪ければ重大な結果を招くこともあります。ゴルフを楽しむ方は、万が一の時に被害者に十分な賠償をするためにも、そして、自分自身が多額の損害賠償の負担で苦しまないようにするためにもゴルフに関する損害賠償責任保険に入っておくことをお勧めします。