2017(平成29)年5月3日午後,郡山市労働福祉会館にて,第38回憲法を考える市民のつどいを開催しました。この「つどい」は、毎年5月に、当事務所と市民の皆さんとで実行委員会をつくり開催しているもので,今回で38回目となります。今回の「つどい」には、約200人の方にご参加いただきました。
現在の憲法(日本国憲法)は,1947(昭和22)年5月3日に施行(法が実際に効力を持つこと)されました。今回のつどいは,憲法の70回目の誕生日(人間でいえば古希の誕生日)に開催したことから,「憲法施行70周年、今あらためて考える-憲法と私たちの暮らし」と題して開催しました。
つどいでは,まず,福島県内の合唱団のみなさん約30人に,東日本大震災と原発事故をきっかけにつくられた合唱組曲「福島に生きる」を演奏していただきました。
その後,東京慈恵会医科大学教授(憲法学)の小澤隆一先生にご講演をいただきました。小澤先生は,集団的自衛権の容認と自衛隊の海外派兵の拡大を目的とする「平和安全法制」(戦争法制)の制定は,憲法9条の平和主義にとって大きな脅威となっているものの,改憲勢力にとっては,憲法改正の必要性を薄れさせてしまいかねないものであり,平和安全法制に反対する運動や先の参議院選挙での野党共闘の広がりなどもあり,改憲勢力の間には,いま焦りと幻滅が広がっているとお話されました。その上で,日本国民が,アジア太平洋戦争や原爆のがれきの中から,「もう二度と戦争はしたくない」という思いを込めて,日本国憲法の平和主義や平和的生存権の理念をつかみ取ってきたことに触れ,「誰の命,誰の幸せも犠牲にしない」「誰かの犠牲の上によって立つ幸せなどありえない」ことが,日本国憲法の基本的な考え方であり,この考え方に立って,憲法の価値を実現していこうと訴えられました。憲法の古希の誕生日にふさわしい,分かりやすいお話だったと思います。
最後に,「憲法施行70年を迎え,あらためて憲法の基本原理を守り抜くアピール」を参加者のみなさんの満場の拍手で採択し,閉会しました。
「つどい」と同じ日,安倍晋三首相は,2020年までに憲法を改正すると宣言したと伝えられました。憲法9条1項・2項は変えずに,自衛隊を合憲とする条項を付け加えたいということのようです。しかし,安倍首相をはじめとする歴代政府が,自衛隊を憲法違反ではないとしてきた根拠は,「自衛隊は,専守防衛のための必要最小限度の実力だから」というものでした。安倍首相は,平和安全法制を強行成立させ,集団的自衛権の行使をすることを宣言した結果,「自衛隊が憲法に違反する滑動をするのではないか」と疑われる根拠を自ら作り出したのですから,それを逆手にとって「だから改憲しよう」というのは,虫のよすぎる話ではないでしょうか。
この「つどい」が,憲法について,あらためて自分の生活に深くかかわるものとして考えていただくきっかけになれば,と強く願います。