ここ数年,残業代(時間外労働手当)をめぐる相談が増加しているように感じます。できるだけ人件費を抑制したいという企業側の意識と,働く人たちの権利意識の間にギャップが生じ,それが次第に大きくなっていることが,残業代をめぐる相談の増加にも反映しているのかもしれません。
使用者は,法定の労働時間(一日8時間,週40時間)を超えて労働させてはならないというのが,労働基準法等の本来の考え方です。働く人たちの健康と家庭生活の維持のため,法律はこのような考え方をとっています。労働基準法では,時間外労働をすることについての労使協定(三六協定と呼ばれます)を定め,かつ,所定の割増賃金を支払えば,法定の労働時間を超えて労働させることを認めていますが,これは,本来の法律の考え方からすれば,あくまで例外的なものです。たとえ割増賃金を支払ったとしても,無制限に長時間労働をさせてよいということにはなりません。
2017年3月に発表された政府の「働き方改革実行計画」では,時間外労働は原則として月45時間,年360時間としたものの,特別な事情がある場合には年720時間(月平均60時間)が許容され、単月あたりの上限は100時間未満との特例も付け加えられました。月100時間の時間外労働を認めるとするのは,これまでの裁判例で「過労死ライン」とされてきた月80時間をも上回るものであり,これが「働き方改革」の名に値するかは疑問といわなければなりません。
それはともかくとして,実際に時間外労働をした場合に,それに見合う割増賃金の支払を求めるのは,法律上当然の権利ですが,実際には,それすら支払っていない企業も存在します。
例えば,「固定残業代」と称して一定額の手当を支払い,実際に何時間残業したとしても,手当額は変わらないとか,場合によっては,実際の労働時間の把握すらしていない企業もあります。しかし,このような場合でも,あきらめる必要はありません。「固定残業代」との使用者側の主張が認められるのは,一定の例外的な場合に限られますし,タイムカードなどがない場合でも,様々な資料から残業時間を推定計算して残業代請求が認められた例が数多く存在します(当事務所でもたくさんの実例を積み重ねています)。
ぜひ,お気軽に相談ください。