私は,住まいと離れた他県で個人事業を営むため,事業に使用する自動車を購入しましたが,事業所が住まいと離れているため,事業所近くに住む知人の承諾を得て,その知人を所有者として登録をしました。私としては,事業所近くに引越した後で,知人から自動車の名義移転をしてもらうつもりでしたが,その知人が行方不明になってしまいました。何とか自分の名義にする方法はないでしょうか。
ご回答
自動車については,権利関係を明確にし,また運行の安全等を確保するため,運輸局での自動車登録制度が設けられています。そのため,自動車は使用の本拠地の陸運局に登録することが義務付けられており,車検証に所有者の氏名が記載されます。自動車について売買等で所有権が移転した場合には,自動車登録上の所有者の名義も変更しなければなりません。
通常は,現在の所有者の署名捺印(実印)をした譲渡証明書と印鑑証明書を添えて名義変更(移転登録)手続をすることになりますが,ご質問のケースでは,現在の自動車登録上の所有者である知人の方が行方不明なので,譲渡証明書や印鑑証明書をもらうことができません。
そのため,知人の方がどうしても見つからない場合には,自動車の移転登録手続を求める訴訟を提起する必要があります。その訴訟で移転登録手続を命ずる判決を得て確定すれば,その確定判決を添えて運輸局に移転登録の申請をすることにより,知人の方の協力がなくても登録移転手続ができます。
ただし,行方不明の方を被告とする裁判手続には,公示送達と呼ばれる特殊な手続が必要となり,一般の方が自分で行うにはかなり困難が伴います。弁護士など専門家に依頼をすることをお勧めします。