父親が亡くなりました。遺言がありましたが、遺産の全部を兄に相続させるという内容であり、納得できません。遺言に従わなければならないのでしょうか。相続人は、母親と兄、そして私の3人です。
ご回答
遺言のある場合であっても、一定の近親者には、遺言者の意思に反しても相続財産の一定割合が留保されます。これを遺留分といいます。
遺留分を有するのは、兄弟姉妹を除く法定相続人、すなわち配偶者、子、そして直系尊属です。したがって、あなたも母親も遺留分権利者ということになります。
遺留分は、まず、遺留分権利者全体に残されるべき遺産全体に対する割合として定められます。その割合は、相続人が父母などの直系尊属のみの場合は遺産の3分の1、それ以外であれば遺産の2分の1です。したがって、あなたのケースでは遺産の2分の1である。そして、各遺留分権利者の遺留分の率は、全体の遺留分の率に、各遺留分権利者の法定相続分の率を掛けたものとなります。あなたの法定相続分の率は4分の1であるから、遺留分の率は8分の1(=1/2×1/4)、また母親の法定相続分の率は2分の1であるから、遺留分の率は4分の1(=1/2×1/2)となります。
本件の場合、あなたや母親に残された財産は何もないから、遺言によって遺留分が侵害されているということになりますが、遺留分を求めるためには、あなたや母親のほうから、遺留分が侵害されていると主張しなければなりません(遺留分減殺請求といいます)。したがって、あなたや母親は、お兄さんに内容証明郵便を送付するなどして、遺留分を減殺するとの意思表示をすべきです。減殺請求には1年の消滅時効の定めがあるから、早めに意思表示をする必要があります。
減殺請求がなされた場合、お兄さんは、あなたや母親に対して、遺留分の率に応じて遺産を返還しなければならないことになります。しかし、応じてもらえない場合も多く、その場合には、調停や裁判をする必要がありますから、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。