2017(平成29)年10月10日、福島地方裁判所で「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟(第1陣訴訟。以下「生業集団訴訟」といいます。)の判決がありました。同訴訟は、福島第一原発事故の被害者(原発事故当時、福島県内及び隣接県に居住していた人)約3800名が、国と東京電力を被告として、福島原状回復と損害賠償を求めた訴訟であり、当事務所所属弁護士も原告代理人として活動してきました。
2013(平成25)年3月に提訴して4年半、福島県内では過去に前例のない大規模訴訟でしたが、判決は、国と東京電力が事故を予見できたこと、適切な対策をとっていれば事故を防ぎ得たと判断し、国と東京電力に事故についての加害責任があると認めました。
また、福島県の県南地域や茨城県の一部地域の原告にも賠償を認めるなど中間指針等に基づく賠償対象地域よりも広い地域を賠償の対象とし、「自主的避難等対象区域」等の原告について賠償金の上積みを認める判断をしました。特徴的なのは、原告が居住している(居住していた)地域ごとに判断し、一人一人の年齢、性別、職業、家族構成などの事情を考慮せず、誰でも最低一律に認められる損害額を判断していることです。いわば、裁判所が、「中間指針」による賠償の線引きをやり直したということであり、この判決で賠償が認められ、あるいは賠償額が上積みされた原告の住んでいた地域全体に、この判決の結論をあてはめれば、100万人以上の方が、賠償を得ることができるということになります(もちろん、訴訟を起こしていない人が自動的に受け取れるということではありません)。現在の「中間指針」に基づく賠償のあり方、特に賠償の対象地域や賠償格差などについて、抜本的な見直しの必要があることを示した判決として、画期的なものです。
他方で、判決には、原状回復請求や避難者原告のふるさと喪失慰謝料を認めなかったこと、会津や県外(茨城県の一部を除く)など賠償対象とならなかった地域があること、賠償上積みの水準など、法廷で明らかにされてきた原告らの被害実態を十分に反映したものとは言えないという問題があり、これらについては、控訴審や第二陣訴訟で克服していく必要があります。
今後は、控訴審が仙台高等裁判所で始まります。国と東京電力の加害責任を追及し二度とこのような事故が起こらないようにすること、地域をもとどおりにすること、そして被害者全体の救済を求めて、たたかいはこれからも続きますので、引き続きご支援をお願いします。
なお、判決の内容などについて、詳しくは弁護団HP(http://www.nariwaisoshou.jp/)をご覧ください。
(文責:弁護士渡邊純)