自動車を運転していると,コンクリートの道路に凹みやひび割れなどの損傷が生じていることを見ることがあるかと思います。小さな損傷であれば車がその上を通行しても問題が生じることは少ないですが,損傷が大きい場合,その損傷が原因で事故が起きる場合もあります。
相談をお受けしたケースの中に,市道を自動車で走行中,夜間で暗かったため,道路に生じていた深さ10センチほどの凹みに気づくことができずに進んだところ,自動車が凹みにはまってしまい,自動車に数十万円の修理費用を要する損傷が生じてしまったというものがありました。
このような場合,自動車同士の事故ではないため,単なる自損事故と考えてしまう方も多いかもしれませんが,道路の状態,事故状況等によっては,道路の管理者である国や公共団体(県や市)の責任を問うことが可能な場合もあります。
市道を管理する市(県道であれば県)は,道路の路面を,可能な限り事故が起きないような状態に保っておく必要があります。しかし,それを怠り,事故が起きかねないような状態,つまり,「通常有すべき安全性」を欠くような状態を生じさせていた場合には,市は,それによって道路の通行者に生じた損害(例えば,けがの治療費,自動車の修理費用など)を賠償する義務を負います(国家賠償法2条1項)。
もっとも,ただ単に道路に損傷が生じていれば市の責任を問えるというわけではなく,道路の損傷の規模・状態や,補修や見回りなどの防止措置の実施状況などの事情を総合的に考慮して,市の道路管理に問題があったかどうかを判断することになります。例えば,事故に繋がるような損傷の状態とは考えられない場合や,市がおよそ防ぐことのできない原因によって損傷が生じていた場合などは,市の道路管理には問題はなく,市に責任はないとされる可能性があります。
また,市の道路管理に問題があったといえるとしても,例えば,事故当時の道路の見通しが良く,路面の状態を確認することが十分に可能で,減速や迂回をすれば事故の発生を防ぐことができたといえる場合など,運転者にも事故についての過失があるといわざるを得ない場合もあります。その場合,市から支払われる賠償額が何割か減らされることになります。
自動車を運転する際には,道路の状況に十分配慮して運転をすることが必要ですが,万が一事故が起こってしまった場合には,早い段階で弁護士の助言を得ておくことをお勧めします。