未成年の子どもがいる夫婦が離婚する場合は,離婚の際に,父と母のどちらが親権者になるか決める必要があります。そして,非親権者(非監護親)となった者は,親権者(監護親)に対して,子どもの養育費を支払う義務があります。
また,夫婦には互いに扶助協力義務があるので,たとえば別居中の夫婦であっても,収入が多い一方は,収入が少ない他方の配偶者に生活費(「婚姻費用」といいます)を支払う義務があります。
養育費や婚姻費用の額については,支払い義務者と同じ程度の生活を子どもや他方の配偶者に確保させなければならないという考え方がされています(これを「生活保持義務」といいます)。
具体的な金額については,当事者だけでの話し合いで解決できない場合は,家庭裁判所における調停という手続きで決めることになります。
養育費や婚姻費用は日々必要となるものなので,早く決めることが必要ですから,家庭裁判所では,簡易・迅速に金額を定めるために「算定表」を用いて計算しています。この算定表は,権利者(もらう側)と義務者(支払う側)の年収を基礎として,義務者がいくら支払うべきかを計算し表の形にしたものです。夫婦の双方の収入が分かれば,この算定表から簡単に目安となる金額が分かるようになっています。
しかし,この算定表は10年以上前に作成されたものなので,作成時に用いられた統計資料も10年以上前の古いものです。したがって,現在の生活の実態に合わなかったり,義務者の生活レベルに比べて権利者と子どもの生活レベルが格段に低くなってしまっており,本来の生活保持義務という理念が実現されていないという問題が発生しています。
そこで,日本弁護士連合会は,権利者と義務者の生活レベルの格差を解消し,より生活保持義務の理念を実現するべく,統計資料を更新し計算方法もより実態に即した計算が可能になる「新算定表」を作成し,全国の家庭裁判所に対してこの「新算定表」を用いるように提言しています。
ただ,家庭裁判所がこの「新算定表」を採用して決めたケースはとても少ないと聞いています。先月,ようやく最高裁判所が,「新算定表」について研究する機関を設けると発表しました。したがって,我々も,今後の最高裁判所の動向に注目していきたいと考えています。