セクハラをしてしまった人はどのような責任を問われるのでしょうか。また、会社が責任を負うこともあると聞きましたが、どういうことでしょうか。
セクハラは被害者の人格権を侵害する違法行為とされています。このような人格権侵害を行うことにより、大きく分けて3つの責任(道義的責任は除く)が発生します。
まず一つ目は民事的責任です。被害者から加害者へ慰謝料等の損害賠償が請求されることがありますが、これは加害者の民事的責任を問題とするものです。
二つ目は雇用関係上の責任(社会的責任)です。これは被害者との関係で問題となるものではありませんが、加害者にとっては重大な問題です。当該セクハラ行為が、会社の懲戒事由に該当すると判断された場合には懲戒処分を受ける可能性があります。
最後の三つ目は刑事的責任です。セクハラ被害が重大なものになり、刑事罰の対象となるような行為(強姦、強制わいせつなど)に該当する場合には捜査の対象とされることもあります。
このように、加害者側が違法なセクハラ行為をしてしまった場合には、程度にもよりますが上述したような責任を問われることになりますので注意が必要です。
次に、会社が責任を問われる場合についてお話しします。会社は雇用する従業員が快適に仕事をできるように職場環境を整えなければならないという「職場環境配慮義務」を負っています。セクハラ(パワハラも含む)が起こってしまう職場は快適な職場とはいえませんので、会社はこのようなセクハラ・パワハラが起こらないように配慮する義務を負っていることになります。具体的に会社が行うべきことについては、厚生労働省が「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」とよばれるガイドラインを定めており、参考になります。この指針によると、会社は以下のような措置を講じることが求められています。
① 職場におけるセクハラの内容・セクハラがあってはならない旨の方針を 明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
② セクハラの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
③ 相談窓口をあらかじめ定めること
④ 相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。
⑤ 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
⑥ 事実確認ができた場合は、行為者及び被害者に対する措置を適正に行うこと
⑦ 再発防止に向けた措置を講ずること(事実が確認できなかった場合でも)
⑧ 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること
⑨ 相談したこと、事実関係の確認に協力したことなどを理由として不利益な取り扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること
これらの措置を講じていない場合には会社が加害者とともに民事上の責任を問われることになりますので注意が必要です。