インターネット上での掲示板や,SNS(FacebookやTwitterなど)を非常に多くの人が利用しています。気軽に利用ができる反面で,配慮を欠いた書き込みによって,プライバシーや名誉が傷つけられるといった被害のご相談も増えてきています。
加害者の特定が必要
掲示板やSNSに誹謗中傷などの書き込みがされている場合,ネットワークを通じて様々な人が目にすることになりますし,場合によっては広く拡散していきますので,書き込みをされた方は,深刻な被害を受けることになります。書き込みの削除や損害賠償などを求めて法的手続をとることもできますが,そのためには,書き込みをしたのが誰かを特定しなければなりません。しかし,匿名で掲示板やSNSに書き込みがされている場合,書き込みをした人の特定は,かなり複雑な手続(「発信者情報開示請求」と呼ばれています)を踏む必要があります。
発信者情報開示の手続
まず,掲示板やSNSのサービス運営者に対し,書き込みをした人の「IPアドレス」(ネット上の「住所」にあたるもの)の開示を求めます。IPアドレスが判明したら,そのアドレスを管理しているプロバイダー(ネット接続サービス業者)を調べ,そのプロバイダーに対して,書き込みをした人の契約情報(住所や氏名など)の開示を求めることになります。これらの開示請求については,「プロバイダー責任制限法」という法律に基づいて行いますが,業者等が開示を拒否する場合には,業者を相手方にして開示を求める仮処分などの訴訟手続を経る必要があります。また,通信記録の保存期間(業者によって異なりますが,通常,数ヶ月と言われています)を過ぎているなどの理由で開示を受けられないこともあります。
このようにして,書き込みをした人の住所や氏名などを特定してはじめて,書き込みをした人に対する損害賠償などの法的手続を行うことができるようになるのです。このように,書き込みをした人の特定にはかなりの手間暇がかかる場合がありますので,それを待っていられない場合には,サービス運営者に対して,書き込み自体の削除を求めることも検討するとよいと思います(削除を求める方法や手続は,それぞれ異なりますので,運営会社のウェブサイトなどをご覧ください)。
自分が書き込みをしてしまった場合
匿名だから…などと安易に考えて書き込みをしてしまい,他人のプライバシーや名誉を傷つける結果になってしまうこともあります。上記のように,被害者の方が一定の手続を踏んで特定し,損害賠償などを求められる可能性があります。また,刑法上の名誉毀損罪などに該当するようなケースでは,捜査機関から事情聴取を受けたり,場合によっては起訴されて処罰されることもあり得ます。
賢く利用しましょう
掲示板やSNSサービスは気軽に利用でき,便利なものですが,便利さの反面で落とし穴もあります。不特定多数の人の目にさらされるので,安易な書き込みによって深刻なトラブルに陥ることもあるということを念頭に置き,賢く利用されることをお勧めします。また,万一トラブルが生じた場合には,早めに弁護士など専門家に相談されるとよいでしょう。