現在,会社に勤めていますが,自分には仕事が合わないと思い転職を考えています。ただ,会社は人手不足で,退職の希望を会社に伝えることがなかなかできません。ネットで退職代行サービスというものを知りましたが,こうしたサービスを利用する際に,なにか注意点はありますか?
最近,「退職代行サービス」を掲げる事業者が増え,話題となっています。
法律上は,労働者が退職をしたい場合,2週間前に使用者に対して退職の意思表示をすれば足り,使用者の同意などは必要ありません。しかし,実際には,上司が退職届の受け取りをしてくれなかったり,業務の引継ぎなどを理由に退職させてくれなかったりすることがあり,このような需要に応じて退職代行サービスを行う業者が出てきたようです。
退職代行サービスは,事業者によって内容や料金などが異なりますが,一般的には「退職の意思を本人に代わって会社に伝言してくれる」「社員証や保険証の返却などについての伝言を会社との間で取り次いでくれる」という程度のものです。例えば,退職に伴って,未払の賃金を会社に請求したり,逆に,会社から損害賠償の請求をされたりするケースのように,退職に伴って会社と交渉をすることが必要な場合,代行サービス業者がこうした交渉を代行することは,法律違反となり,許されないからです。
退職の意思表示についても,使用者側からは,「代行サービス業者からの連絡だけでは,本人の意思確認ができない」として,本人から直接退職届の郵送をしなければならない場合も多いようです。
退職代行サービスが生まれた背景には様々な社会事情があり,このようなサービスを一概に否定するものではありませんが,利用する場合には,サービスの内容や範囲,料金などを十分に確認するのがよいでしょう。
また,未払賃金の請求をしたい場合や,退職の意思表示をすれば会社から損害賠償請求をされる可能性があるなど,交渉の必要性が高い場合には,弁護士などの法律専門家に依頼することをおすすめします。当事務所では,退職に関するトラブルのご依頼を受けて解決した事例が多数ありますので,お気軽にご相談ください。