事件の内容
Aさんは新しく学習塾を始めようと考え、土地を探していました。そうしたところ、知人を通じて安く土地を購入できることになりました。その土地にはかなり前から使われなくなっていると思われる小屋がありましたが、敷地としては十分な広さでしたので、特に気にせずに購入を決断しました。その後自費で教室を建設し、学習塾を始めました。
その後Aさんも高齢になってきたので、学習塾を閉鎖し、この土地を更地にして売却しようと考えました。更地にするために、教室の建物本体と、古い小屋を壊そうと思いましたが、小屋の持ち主が分からず、困っているという内容でした。
回答
Aさんとしては、たいした価値もない小屋であり誰も利用していないので取り壊したいと考えていたようです。しかし価値がないと思われる小屋であっても、あくまで他人の物ですので、勝手に壊してしまうことはトラブルを招きかねません。まずは小屋の所有者となっている人を探しだし、その方の了解を得ておくことが肝要です。
しかし、今回は小屋の所有者が分からないということでした。不動産は登記がされていれば登記簿を取り寄せることで所有者が判明します。そこでこの小屋の登記簿をとろうとしたところ、小屋は未登記の物件であることが分かりました。このような未登記の物件になると、所有者が誰であるのかは分からなくなってしまいます。ところが、今回の件では土地の登記簿の中に地上権の登記がなされていました。地上権というのは、建物などのために土地を利用する権利のことで、土地の登記簿のなかに記載がされていることがあります。地上権の登記があるということは、何らかの原因(建物を利用するためなど)があるものですので、今回はその地上権を手掛かりに調べることにしました。地上権の権利者とされている人に連絡をとり、小屋のことを聞いたところ、小屋の所有者であることが判明しました。ようやく小屋の所有者が分かりましたので、小屋の取り壊しの許可をもらい、無事に解決に向かうことができました。
また、小屋の所有者が判明するまでの間は、子どもなどが立ち入ってけがをしたりしないようにするため、周囲を囲い、立ち入り禁止の措置を講じるように助言しました。
最近は空き家問題などをはじめ、所有者がわからない不動産等に関する相談が増えてきています。他人の物は勝手に処分することができないということが原則です。所有者不明物件などでお困りの場合には、一度弁護士などにご相談されてみてはいかがでしょうか。解決への糸口が見つかるかもしれません。