突然ですが,皆さんは,郡山市に母子生活支援施設があるのをご存じでしょうか。一般にはあまり知られていませんが,郡山市は,昭和40年代に母子生活支援施設「ひまわり荘」を開設し,運営を続けてきました(現在,郡山市社会福祉事業団に運営委託)。母子生活支援施設とは,児童福祉法38条に基づいて設置されるもので(昔は「母子寮」と呼ばれていました),一人で子どもを育てている母親や,様々な事情(経済的困窮や家族内の暴力など)で子育てに困難を抱えている母親が,子どもと一緒に入居して生活支援を受けることができる施設です。
郡山市の「ひまわり荘」については,老朽化し耐震性の問題があることなどから,近年入居者が減っていましたが,郡山市は,施設の老朽化を理由に「地域での生活支援に切り替える」などとして,昨年12月に施設の廃止の条例案を市議会に提出しました。しかし,市議会では反対や疑問の意見が相次ぎ,廃止条例案が撤回されました。
廃止条例案は撤回されたものの,入居者は市営住宅などに移され,施設の建物は解体される予定で,施設の建て替えや再建などの目途は全く立っていない状況です。
広い福島県ですが,同様の施設は,ひまわり荘を含め4施設しかなく,ひまわり荘がこのまま事実上廃止されてしまうと,生活に困難を抱える母子が郡山市で生活を続けていくことができなくなってしまう可能性があります。
最近,千葉県で小学生の女子児童が虐待死したという痛ましい事件が報道されていますが,この事件では,かなり以前から,行政機関は父親から母親への暴力(DV)の事実を把握していたと報道されています。行政が適切に連携し,シェルターや母子生活支援施設などで母親と女子児童を保護し,DV法に基づく保護命令や離婚などの援助を行っていれば,もしかしたら,虐待死という最悪の結果を防ぐことができたかもしれません。母子生活支援施設は,DVや虐待を防止し,被害者を守るためにも,重要な役割を果たしうる施設なのです。
現在,市内のひとり親支援団体や社会奉仕団体,市議会議員などが集まって,ひまわり荘の存続を求める運動づくりのための検討会を持っており,当事務所の弁護士も,この検討会に参加しています。
郡山市は,母子生活支援施設の今後について,有識者などによる「子ども・子育て会議」の議論を踏まえて決めるとしていますが,母子生活支援施設は,子どもへの虐待や子どもの貧困をなくすためにも重要な施設です。市民のみなさまも,この問題について関心を持ち,存続に向けて声を上げていただければ幸いです。