【無戸籍問題の解決には】
無戸籍問題については,国や自治体なども出生届の運用改善や行政相互の連携強化,戸籍がなくても受けられる行政サービスを拡大するなどの対策をとりはじめていますが,上のような制度の壁もあり,抜本的な解決にはまだ至っていません。
「DNA鑑定などで親子関係を科学的に確認することが容易になっているのに,民法の規定は時代遅れだ」と感じられるかもしれません。確かに,DNA鑑定などは,かなり容易になっており,以前より正確性も増していると言われています。しかし,DNA鑑定などで判明するのは,あくまで血縁関係の有無に限られます。血縁関係(生物学的親子関係)と法律上の親子関係がいかなる場合でも一致しなければならないというわけではありません。誰と誰の間に法律的な親子関係を生じさせるかは,単に血縁関係だけでなく,子どもの法的地位の早期安定や子どもの福祉など他の利益も重視して決められなければなりません。上のような嫡出推定の規定や親子関係の確認のための法的手続は,複雑でわかりにくく,利用にも困難がありますが,現状ではやむを得ないという面もあります。
とはいえ,無戸籍問題は,本来は子どもの福祉のための制度であるはずの「嫡出推定」が,逆に,その社会生活に支障を生じさせる場合もありうることを浮き彫りにしました。無戸籍問題の全面的な解決のためには,親子関係をめぐる法律の規定自体の見直しを検討する必要があると考えます。
このように見てくると,無戸籍問題は,親子関係をめぐる制度をどのように考えるべきか,あるいは私たちが親子関係をどのように考えているか,などを映し出す鏡のようにも思えます。簡単に答えの出る問題ではありませんが,社会全体で考えていく必要があるでしょう。
【無戸籍についてのご相談は】
各地の弁護士会では,無戸籍問題についての相談窓口を設けており,福島県弁護士会では,こども相談窓口にて,電話での無料相談を受け付けています(電話番号:024-533-8080,平日の午前10時から午後5時まで)。
もちろん,当事務所でも無戸籍問題をはじめとする親子関係についてのご相談を承っています。気軽にご相談ください。