日常生活の中で,隣近所の方とトラブルになることがあります。弁護士としてご相談を受けている中にも,隣近所の方とのトラブルのケースが多くあります。トラブルの種類は様々ですが,多いのは,①生活環境をめぐるトラブル(騒音,悪臭,日照,ゴミの処理,ペットの飼育など),②隣地との境界をめぐるトラブル(境界が未確定であったり,建物・塀・樹木などが越境している),③私道などの通行権をめぐるトラブルなどでしょう。
これらの近隣トラブルについては,その性質や種類などによって,法律的な考え方や解決までの筋道が異なりますが,近隣トラブルならではの共通する傾向があるように思いますので,ここでは,その傾向についてご説明します。
特徴その1 日常生活の中での問題であること
近隣トラブルは,日常生活そのものの中でのトラブルであることがほとんどです。そこから,ある種「お互い様」という部分もあり,法律の上では,軽微なものや一過性のものについては,ある程度我慢し合いましょうという結論となることもあります(「受忍限度」などといいます)。また,騒音などの生活環境にかかわるトラブルについては,個人ごとの生活習慣や感じ方に大きく違いがあります。したがって,我慢の限度を超えていることをきちんと理解しあうためには,測定や写真等による客観的記録を作っておくことも大切です。
特徴その2 長期間にわたりトラブルが継続するケースが多いこと
トラブルがあっても,ご近所であるがゆえに,一方が長期間にわたって我慢し続けているということがあったり,また,お互いに感情的になってしまうなどして紛争が長期化することが多いのも特徴の一つです。アパートやマンションなどの住人相互のトラブルの場合,大家(オーナー)や管理組合への苦情などがあり,大家や管理組合等が当事者の間に入ることもありますが,立場上板挟みになってしまい,解決が図れないケースもあります。そのため,解決のためには,早いうちに専門家へ相談するのがよいでしょう。
特徴その3 話し合いによる解決を図るのがよいケースが多いこと
アパートの住人同士のトラブルのような場合,どちらかが転居することによって解決することができる場合もありますが,戸建て住宅のような場合,そのような解決は容易なことではありません。したがって,法的手段により解決を図る場合でも,その後もお互いに隣近所としての関係を維持できるような配慮が必要な場合が多く,解決手段としては訴訟よりも調停を利用すべきケースが多いと思います(もちろん,これは個別のケースによって異なります)。
このように,隣近所のトラブルには,いくつかの特徴があります。これらの特徴がどの程度あてはまるかは,具体的なケースにより異なりますが,これらの特徴を適切に踏まえ,どのような解決が望ましいかを検討する必要があります。トラブルが長期化したり深刻にならないうちに,弁護士などの専門家にご相談されることをおすすめします。