例えば,故人(被相続人)の生前中,その相続人に当たる者が,被相続人の介護をつきっきりで行ったり,被相続人の営む事業を無償で手伝うなどして,被相続人の財産を増やしたり,支出を減らしたといえる場合,その相続人は,被相続人の財産に対する「特別の寄与」を行ったものとして,その寄与の度合いに応じて,相続分の上乗せを受けることができる場合があります。このような上乗せ分のことを「寄与分」といいます。
この「寄与分」は,「相続人」が「無償」で療養看護等を行い,被相続人の財産に対して「特別の寄与」を行ったといえる場合に,「相続人」が受け取ることができるもので,相続人以外の者は受け取ることはできません。したがって,これまでの相続法の下では,例えば,相続人には当たらない被相続人の長男の妻が,夫が亡くなった後も,寝たきりの夫の実父の介護を無償で何年も行ったとしても,夫の実父が亡くなった時に,「寄与分」やそれに相当するような貢献の対価を当然に得ることはできませんでした。その一方で,被相続人の介護を全く行わなかった相続人は,相続により遺産を受け取ることができますので,介護を行ってきた者にとっては,不公平な結果となることがあり得ました。
このような事態が生じることを防ぐため,相続法の改正により,相続人に当たらない親族(6親等内の血族,3親等内の姻族)が,被相続人の財産に対する「特別の寄与」をした場合には,その親族は,寄与の度合いに応じた「特別寄与料」として,被相続人の相続時に,相続人に対して金銭の請求をすることが認められることになりました。これにより,相続人以外の親族も,遺産の中から自身の貢献に対する適切な対価を受け取ることができるようになりました。
もっとも,相続人以外の親族が相続人に対して「特別寄与料」を請求することができるようになったことにより,親族間の相続に関するトラブルが増加する可能性もあります。特別寄与料の請求をしたいと考えている,または請求を受けている,などのご相談があれば,当事務所までお問い合わせください。
なお,「特別寄与料」の制度は,今年(2019年)の7月1日以降に亡くなった被相続人の相続について適用され,それより前に亡くなった方の相続については「特別寄与料」の請求はできませんので,ご注意ください。