2019(令和元)年台風19号災害では,福島県内でも,河川の氾濫や堤防決壊,土砂崩れなど甚大な被害が発生し,10月23日現在,福島県内59市町村のうち,55市町村に災害救助法が適用されています。自宅の浸水などによって被災された方に,心からお見舞い申し上げます。
ここでは,住宅ローンで家を建てたが,その家が水害で浸水してしまったという例を想定して,生活の再建に役立つ制度をいくつかご説明したいと思います。
住まいが浸水してしまった場合,生活の再建には,家の補修や再築,浸水した家財の再購入など,かなりの費用がかかりますが,従前の住宅ローンの支払いがある場合には,その負担が生活再建の妨げとなってしまうことがあります。
罹災(りさい)証明書について
まず,住まいの浸水被害の場合,罹災(りさい)証明書の発行を受けることが,さまざまな支援制度を受けるための出発点となります。市町村役場に罹災証明書を申請すると,役場が「住家被害認定」を行います。その際,家の被害状況(基礎や外壁,建具等がどの程度壊れたか,どの程度の深さまで浸水したか)の写真をなるべく多く撮影し,持参すると,比較的スムーズに罹災証明を受けることができます。
罹災証明書の発行を受けた場合,罹災証明に記載された被害の程度(全壊,大規模半壊,半壊,一部損壊など)に応じて,災害義援金の支給や,災害救助法に基づく住宅の応急修理などの支援を受けることができます。このほか,全壊や大規模半壊など住宅の被害認定によっては,被災者生活再建支援金(50万円~300万円程度)が支払われる可能性があります。それ以外にも行政の支援制度がありますので,市町村役場にご相談ください。
火災保険金や住宅ローンのリスケジュール等
また,お住まいや家財について火災保険に加入している場合には,浸水についても保険金が出ることがありますし,住宅ローンについても,災害時に返済の繰り延べ(リスケジュール)などが可能な場合がありますので,加入している保険会社やローンを借りている金融機関等に問い合わせしてみるとよいでしょう。
「自然災害債務整理ガイドライン」に基づく債務整理
こうした制度を利用してもなおローンの支払いが困難な場合,裁判所に自己破産や個人再生等の申立てをすることもできますが,この場合,信用情報機関に事故情報として登録がされるため,生活再建資金が必要であっても新たにローンを組むことができなくなるなど,デメリットもあります。
そのため,「自然災害債務整理ガイドライン」という仕組みが用意されています。災害により債務の返済が困難となった被災者が,弁護士などの「登録支援専門家」の支援のもと,資産を売却して債務を支払ったり,分割して弁済するなどの債務整理案を作り,全ての債権者(銀行など)の同意を得ることによって債務の減免などを受けられるという手続です。「ガイドライン」を利用した債務整理には,破産等に比べて再建資金を多く手元に残すことができる,事故情報の登録がされないなどのメリットがあります。
ガイドラインを利用して債務整理の手続を行うためには,自然災害によって債務の支払が困難になったことや,債務整理の手続開始について主債権者(借入元本の最も多い債権者)の同意を得ることなど,所定の条件を満たす必要があり,また債務整理の手続も,ガイドラインの規定に従って行う必要があります。
詳しくは,ガイドライン運営機関(http://www.dgl.or.jp/)や,弁護士等の専門家にご相談下さい。