ある会社に試用期間3か月との約束で採用されました。仕事はやりがいもあり,特にトラブルもなく,これからも続けていけそうだと思っていたところ,試用期間終了日に上司から呼び出され「会社で検討した結果,あなたの本採用は見送りということになりました。明日からは出社には及びません」と言われました。納得がいかないのですが,争う方法はありますか?
期間の定めのない雇用契約(労働契約)を締結する際に,本採用前に試用期間が定められることがあります。試用期間が定められた雇用契約については,一般に,「解約留保権つきの雇用契約」と理解されています。つまり,試用期間中であっても雇用契約自体は有効に成立しているが,試用期間中の調査や勤務態度の観察等に基づき,使用者が従業員としての適格性などを判断して,試用期間満了時に留保された解約権を行使することができるということです。このように理解した場合,試用期間満了時の本採用拒否は,実質的には解雇といえますので,試用期間の定めがあっても使用者は自由に本採用拒否ができるわけではなく,解雇と同様に,合理的な理由を欠き,社会通念上相当と認められない場合には,無効となります(労働契約法16条)。
もっとも,試用期間は従業員としての適格性があるかを判断するために必要なことでもあるため,解雇(本採用拒否)の理由や相当性の判断は,通常の解雇と比較すれば,より緩やかになされる傾向があります。裁判例などでは,①試用期間中の調査や勤務状態の観察により,採用当初は知り得なかった事実が判明し,②この事実の重要性に照らして,引き続き雇用するのが適切でないと判断することが相当と認められる場合には,解雇(本採用拒否)は有効であると判断されています。
ご相談のケースでは,会社側は本採用拒否の理由を明らかにしていないようですが,上に述べたように,本採用拒否も解雇の一種ですので,解雇の理由を具体的に記載した書面(解雇通知書,解雇理由証明書などといいます)の交付を会社に求めることができます(労働基準法22条)。その上で,解雇通知書などに記載された解雇事由が存在するか,解雇を相当とする理由になり得るか,などを明らかにしていくことになります。
解雇の効力を争う方法としては,訴訟や仮処分,労働審判など裁判所を通じた手続もありますが,労働局のあっせん手続なども利用できます。それぞれの手続には費用,期間,解決の実効性などに違いがあり,事情に応じて手続を選択する必要がありますので,弁護士などの専門家にご相談されるとよいでしょう。
また,試用期間中14日以上継続して雇用されている場合には解雇予告制度の適用があります(労働基準法20条,21条)。仮に,解雇(本採用)の効力を争わなかったとしても,予告なしに本採用を拒否された本件のケースでは,解雇予告手当の支払いを請求することができます。