お金を貸していた会社の代表者Aが亡くなってしまいました。その会社は代表者A一人で経営していた小規模なもので、他にもたくさんの借金を抱えていたようです。倒産なども考えていたようなのですが、結局具体的な行動を起こす前に亡くなってしまったのです。会社を相手に裁判を起こそうと思うのですが、会社代表者Aの相続人が全員相続放棄をしてしまったと聞きました。私はどうすればいいのでしょうか。
一般的に法人である会社を相手に裁判を起こすことはもちろん可能ですが、今回のように代表者がいない法人の場合には具体的に法人のために裁判を行える人がいない状態であり、このままでは裁判を起こすこともできません。このような場合に利用できる制度として、特別代理人という制度があります。これは本来の代理人が代理権を行使することができない又は不適切な場合あるいは不存在である場合に、本来の代理人が行う職務を行う特別な代理人のことをいいます。
今回の場合では、本来法人のために裁判を遂行する代表者Aが不存在という場合ですので、特別代理人の選任申し立てが可能になると思われます。この特別代理人は、当該訴訟を法人代表者の代わりに遂行する権限を与えられておりますので、この特別代理人を相手にして訴訟を起こすことができることになります。
なお、このほかにもAの相続財産管理人を選任して訴訟を提起することも考えられますが、相続財産管理人は先ほどの特別代理人と異なり、今回の裁判以外の他の財産管理についても処理をすることになります。したがって、相続財産管理人の業務は特別代理人と比べて多大なもの(費用や時間もかかります)になりがちです。今回のような裁判を起こすためだけに誰かに法人の代わりに裁判を遂行してほしいという限度であれば、特別代理人を選任してもらう方法がより適切であると思われます。
この特別代理人選任申し立ては、貸金返還請求訴訟の提起と同時に行い、特別代理人を相手に訴訟を進めていくことになるでしょう。
このように、法人の代表者がいなくなってしまったような場合でも、この法人に対するトラブルを解決する方法が見つかることもありますので、裁判所や弁護士などにご相談いただくことをお勧めします。