特定秘密保護法の廃止に向けて
2013年(平成25年)12月6日、特定秘密の保護に関する法律案(以下「特定秘密保護法」といいます)は衆議院に続いて参議院でも採決が強行されて成立しました。この法案は、国会に上程されてからも各方面から厳しい批判を受けてきて、短い国会審議の中でも政府答弁は迷走を重ね、矛盾を露呈してきた法案でしたが、政府・与党は国会における数の力を頼りに採決を強行してしまいました。しかし、このようにして成立した特定秘密保護法ですが、成立直後から法律の廃止を求める声、抜本的な見直しを求める声などが各方面からあがりました。
この法律の特徴は、特定秘密の対象が抽象的で極めて曖昧であるとの批判を受けてきた点にありました。行政機関の長が、外交、防衛、スパイ、テロに関わる情報を特定秘密に指定します。その情報が何故に特定秘密に指定されたかのチェックもなされず指定されますので、政府にとって都合の悪い情報は一切外部に出さなくすることも可能になります。
しかも、「特定秘密」の秘匿のために、その取得・漏洩のみならず「管理を害する方法での取得」や共謀、教唆、扇動といった行為も処罰可能とし、処罰対象も、公務員のみならず特定秘密取り扱い業務従事者にも広げられて、最高刑で懲役10年の重罰に処せられる仕組みになっています。その結果、特定秘密に指定された情報は、ほんの一握りの高級官僚等による恣意的な独占と管理に道が開かれることになります。
以上の結果、民主主義社会にとって不可欠な報道の自由や国民の知る権利は蹂躙され、国民は真相を知ることが出来ないという「蚊帳の外」に置かれることになります。さらに、「特定秘密」とされた情報については、国会や裁判所、警察を除く地方自治体に対しても提供されないのが原則ですから、国民によって国家権力を監視することすら事実上不可能となる事態を招くことになりかねません。
加えて、この特定秘密取り扱い業務従事者に対しては、「適正評価制度」を導入しています。これは、特定秘密を取り扱う者について、秘密を漏らすおそれがないかどうかの適性を評価するための調査をするというものです。特定秘密を取り扱う公務員や民間人や場合によってはその家族まで調査対象になります。これでは、個人の私生活上の知られたくない情報まで丸裸にされかねず、調査を拒否すれば不利益な扱いを受けることも予想されます。
特定秘密保護法は、2013年10月25日に国会に上程され成立が強行される12月6日までわずか40日余りの短期間でしたが、その間に、最近では例を見ないほどの反対の輪が広がりました。それは、この法律の持つ危険性が看過できるようなものではないことを表しています。そして、この危険性が除去されることなく採決が強行されたことが、現在もこの法律の廃止を求める世論につながっているのだと考えられます。
この法律がどうして必要なのか、特定秘密とは何か、それをどうチェックできるのか、国会や裁判所によるチェックはできるのか、報道の自由・知る権利は保障されるのか、様々な疑問が解消できていない特定秘密法は修正では解決できない根本的な欠陥を有している以上、廃止を求めるしかないと考えます。