インターネット上に無料で求人広告を掲載するサービスについてのトラブルが多発しています。
トラブルの内容は,企業などが電話で「無料で求人サイトに求人広告を掲載しませんか?」との勧誘を受け,求人広告の掲載を依頼したところ,一定の期間を過ぎた後に突如として多額の求人情報掲載料を請求される,というようなものです。これまで当事務所においても,このような経緯で求人広告の掲載料の請求を受けたという複数のご相談を受けています。
このような事案において,求人サイトの運営会社は,「解約の申し出がない限り自動で有料掲載に切り替わると契約書に記載しています。」というような主張を行うのですが,実際には電話などでは説明を行わず,契約書・申込書などに分かりにくい文言で「自動で有料掲載に切り替わる」という条項を記載しているというのが,共通する手口です。このような場合,掲載料の請求を受けたとしても安易に支払ってはいけません。
まず,求人広告掲載の申し込みをする側が,一定期間経過後に有料掲載に自動で切り替わるということを認識していなかった場合,契約の中の重要な部分についての認識を誤って契約を締結してしまったということで,民法上の「錯誤」を根拠として契約の無効を主張することがあり得ます(民法95条)。また,求人サイトの運営会社が掲載料に関して積極的に虚偽の説明を行ったことにより,騙されて契約してしまったといえるようなケースでは,業者の「詐欺」を理由に,契約を取り消すこともあり得ます(民法96条)。いずれの場合であっても,契約の効力は無くなり,申し込みをした側が掲載料の支払いをする必要はありません。
このような求人サイトの運営会社の手口は,申し込みをする側の誤解をあえて招く悪質なものです。まずは,契約をする前の段階で,料金が発生する可能性や,解約方法などについてきちんと問い合わせを行い(回答はメールやFAXでもらっておくと確実です),このような手口に乗ってしまわないよう注意するべきです。また,既に請求を受けている場合には,支払う意思がないことを書面で明確に通知したり,弁護士へ相談した上で対応することをご検討ください。