先日交通事故に遭ってしまいました。事故の内容は、私が交差点の近くを歩いていたところ、交差点で出合い頭にぶつかった2台の車のうち1台が私のところに突っ込んできたというものでした。それにより、私は骨折等の重傷を負い、加害者に対して損害の賠償を求めたいと思っています。ところが、ぶつかってきた車(Aさんが運転)は任意保険に入っておらず、Aさんも若い方でお金がないということでした。もう1台の車の運転者(Bさん)にも請求しようと思っているのですが、どうやら事故原因はAさんの確認不足ということで、Aさんの方の過失割合が大きいようです。Bさんからは「悪いのはAさんなのだから、自分たちは賠償する責任はない。Aさんに言ってくれ」と言われてしまいました。私はBさんから賠償を受けることはできないのでしょうか。
今回の事故のように、加害車両が2台あるような事故が発生してしまうことがあります。被害者に直接接触したのはAさんの車ですが、そのような状況になったのは直前のA車とB車との接触事故によるものといえます。このような場合には、B車も加害者となります。
このように複数の加害者がいる場合、それぞれの加害者が被害者に対してどこまで責任を負うのかが問題となります。民法ではこのような場合には、共同不法行為として、加害者はそれぞれ被害者に全額の賠償をしなければならないと定めています(不真正連帯債務といいます)。今回の場合では、AさんとBさんは、それぞれ被害者に全額の賠償をする責任があり、被害者はAさんに請求してもよいし、Bさんに請求してもよいということになります。もちろん、請求できる金額が2倍になるわけではありませんので、総額として受け取れる金額に変化はありません。ただし、Bさんの主張のようにAさんとBさんの過失割合に応じて請求できるということではなく、被害者は(過失割合に関係なく)Bさんに全額の請求をしてもよいということになります。
一方でAさんとBさんの間では、過失割合に応じて被害者に賠償した金額を清算することになりますので、Bさんが被害者の請求に応じて全額賠償した場合には、後日BさんはAさんに対して清算を求めることができることになります(つまり、Bさんは自分の方の過失割合が小さかったとしても、そのことを理由として被害者からの賠償請求を拒むことは出来ず、一旦全額の賠償をする責任があるということになります)。
以上のようなご説明は、Bさんにも少なからず事故の過失割合が存在する場合を想定しています。Bさんに過失が全くないような場合には、被害者に対する不法行為が成立せずにBさんに対する請求はできなくなります(今回のように出合い頭でぶつかったような場合には、Bさんの過失も一定程度あると考えられます)。
加害者が複数にわたるような事故に遭遇されると、事故後の損害賠償をめぐる交渉が複雑化します。不幸にもそのような事態に遭遇した場合には、弁護士等にご相談ください。弁護士費用等のご心配もあるかと思いますが、ご本人あるいはご家族が契約されている自動車保険に弁護士費用特約が付加されていることもあります。弁護士費用特約が利用できれば弁護士費用等の不安が解消されることもありますので、一度確認されてはいかがでしょうか。