先日,「確実に儲かる方法を教えます」とのネット上の広告が目に入ったので,興味本位でクリックしてみました。すると,投資のテクニックに関する情報商材の販売サイトが表示され,「誰でも簡単に利益が出る」などの文句が並び,実際に数十万円の利益が出たという利用者の声がたくさん掲載されていたので,金額は高かったのですが,商材の購入申し込みをしました。その後,その商材の評判を調べてみたところ,「利益が一向に出ない」「詐欺としか思えない」など,悪い評判ばかりで不安になっています。クーリングオフをして代金を返してもらうことはできないでしょうか?
クーリングオフとは,訪問販売等によって勧誘を受けて申し込んだ契約について,一定期間内に無条件で契約解除ができる制度のことですが,現在の法律では,ネットショッピングのような通信販売の場合にはクーリングオフの制度は使えないこととなっています。したがって,ご質問の場合にはクーリングオフによる契約解除はできないことになります。ただし,返金を求める手段がないわけではありません。
消費者契約法は,事業者が契約締結の勧誘をする際に,将来に消費者が受け取るべき金額等,将来における変動が不確実な事項について,「絶対に」「確実に」など,断定的な判断を提供し,その断定的判断の内容が確実であると消費者が誤認して契約を申し込んだ場合,契約の取消しをすることができると定めています(消費者契約法4条1項2号)。
ご質問の場合,商材の販売サイトには利益が出ることが確実であるというような文言が並んでいたようですので,利益が出るかどうかという将来における変動が不確実な事項について断定的な判断を提供したものとして,消費者契約法4条1項2号に基づく契約の取消しが認められる可能性があります。
インターネット上の広告が「勧誘」に当たるかという問題もありますが,最高裁判例上,不特定多数の消費者に向けられたものでも消費者契約法上の「勧誘」に当たり得るとされていること(最高裁第三小法廷判決平成29年1月24日・民集71巻1号1頁)や,消費者が画面上の広告内容をみて直接契約の申し込みを行うという性質を考えると,これも「勧誘」に当たると考えるべきです。
また,通信販売についての広告の表示には,商品等の売買契約の申し込みの撤回や契約解除に関する事項を分かりやすく記載することが義務付けられています(特定商取引に関する法律11条)。このような表示がされていない場合には,商品等を受け取った日から8日間以内に消費者からの購入申込の撤回等をすることも可能です(特定商取引法15条の3第1項)。
いずれにしても,インターネットで契約をする際には,申込みをする前に商品の内容や消費者の客観的な評価をよく確認した上で,慎重に考えることも重要です。安易に契約を申し込んでトラブルにならないよう注意しましょう。