私の自宅に,裁判所からの「支払督促」という郵便物が届きました。内容を確認したところ,私が十数年前に借り入れをした借金の関係で,債権回収会社にお金を支払うよう命じるもののようです。借り入れをしたのは事実なのですが,何年も返済をしておらず,すっかり忘れてしまっていました。すぐに支払った方がいいのでしょうか。
「支払督促」とは,金銭の支払い等の請求権を有する債権者の申立てに基づき,簡易裁判所の書記官が支払い義務を有する債務者に金銭の支払い等を命じる制度のことをいいます。
この支払督促は,訴訟等とは違い,債務者の言い分を聞いたり,証拠を確認することなく発せられるものです。債務者は,これを受け取ってから2週間以内に異議を申し立てなければ,金銭等の支払を命じる判決を受けたのと同様の効力が生じる(債権者は財産の差押等が可能になる)こととなります。
このように,訴訟を提起するより簡単な手続として,当事者間に支払い義務に争いがない場合などに利用されることが多い制度であり,債権の消滅時効の完成が迫っている場合などにも,時効期間を中断(リセット)するために利用されることもあります。
注意していただきたいのは,長年返済をしていなかった借入れなどについての支払督促が届いた場合です。消費者金融からの借り入れであれば,多くの場合,最後の返済から5年が経過しているときには,消滅時効の完成を主張することによって支払い義務を免れることができます。
しかし,支払督促の場合,基本的には債務者側に言い分を述べる機会は与えられませんので,消滅時効の主張をすることができません。消滅時効の期間が経過したとしても,債務者側がそれを主張しないと支払い義務を免れることはできません(自動的に支払い義務が消えるわけではありません)ので,支払督促を受け取ってから何もせずに2週間が経過してしまうと,その後に消滅時効の主張をしても後の祭りです。
このような場合,支払督促に対して異議を申し立てる書面を裁判所に提出すべきです。支払督促に異議を申し立てた場合,手続きが通常の訴訟に移行し,訴訟の中で債務者側の言い分を述べる機会が与えられます。
債権回収業者などの中には,消滅時効の期間が経過しているにもかかわらず,支払督促の手続きを申し立てる業者も存在します。受け取った支払督促を安易に放っておいてしまうと,後に給料や預貯金などの財産を差し押さえられてしまうおそれもありますので,支払督促を受け取ったときは,速やかに弁護士に対応を相談するようにしましょう。