事案の内容
相談者のAさんは無職でお金に困っていたところ、友人から「コロナの関係で簡単にお金がもらえる」という話を聞き、ラインのグループに招待されました。そのグループの中心人物であるBから「指示に従って準備してもらえれば、国から100万円もらえる。入金になったら半額を手数料として払ってもらえればいい。」と伝えられました。Aさんは50万円もの大金が入るのであればと思い、協力することにしました。BからはAさんの個人情報を聞かれ、マイナンバーカード写しを送るように指示されました。その後、Bから確定申告書とする書類が送られ、これを税務署に提出するように指示されました。Aさんは指示通りに税務署に赴き、申告書を提出して受付をしてもらいました。そのことをBに報告したところ、持続化給付金の申請を行うといわれ、Bに指示されたとおりに書類を記入して提出しました。
その後、報道等で持続化給付金をめぐる詐欺事件について知るようになり、自分も該当するのではないかと心配になったAさんは弁護士事務所に相談に訪れました。
助言内容
新型コロナウイルスによって個人事業主等が営業自粛等によって損害を被っている場合に、持続化給付金が支給される可能性があります。この持続化給付金を申請できるのは、事業を営んでいた方であり、無職であったAさんのように事業を営んでいなかった方は請求することができません。今回のAさんの請求は、真実ではない確定申告を行い、あたかも個人事業主として営業していたかのように偽って持続化給付金を申請したものであり、詐欺に当たる可能性が高いと言わざるを得ません。
Aさんとしてみれば、詐欺をしているというつもりはなかったかもしれません。しかし、自ら虚偽の確定申告を行い、持続化給付金の趣旨を理解せずに請求を行っていることから、AさんはBとともに詐欺の共犯とされる可能性が高いでしょう。Aさんとしては、持続化給付金の趣旨をきちんと理解して自分が請求できるはずはないことを確認すべきです。幸いにもAさんにはまた給付金は支払われていなかったので、直ちに持続化給付金の申請を取り下げるように助言しました。
このような詐欺請求に知らず知らずのうちに加担させられてしまう事件は、県内では東京電力からの賠償金詐欺の事件でも行われました。このときも自分が賠償請求できる状況ではないのに安易に請求を行い、後日詐欺であるとして受領した金額の返金を求められる案件が後を絶ちませんでした。「簡単に大金が手に入る」という話には必ず裏があります。そのような儲け話に安易に飛びつかず、本当に協力してよいのかどうか、一度冷静に立ち止まって考えることが必要です。少しでも疑問を感じたら、そのような話は断りましょう。