事案の内容
未成年の子どもがいる夫婦が何らかの事情によって離婚をすることになった場合、離婚にあたって未成年者の親権者をだれにするか、養育費をどうするかを決めることになります。2022年4月から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられることに伴い、養育費をいつまで支払うことになるのかが問題(養育費の終期の問題)になることがあります。養育費を支払う側から、「法律が変わるのだから、18歳までしか払わない」との主張もよく出されるところです。
事案の解決
そもそも、今回の成人年齢引下げの施行日は2022年4月1日とされています。したがって、2022年3月31日まではこれまでどおり成人年齢は20歳であるとされていますので、改正前の規定に従うことになります。2022年3月31日までに決められた養育費であれば、その後法律が変わったとしても取り決めは影響を受けず、養育費の終期が当然に18歳までに変更されるわけではありません(もっとも、その後両親が協議して18歳までに変更することは可能です)。
では、2022年4月1日以降養育費は18歳までしか支払ってもらえないのでしょうか。この点については、考え方が分かれるものと思われますが、一般的には当然に18歳が終期になるわけではないと考えます。そもそも、養育費は経済的に自立していない未成熟な子どもを養育するために支払われるものです。現在の日本社会では18歳といえば高校3年生程度であり、経済的に自立している子どもは多くはありません。大学進学が一般的になっていることも考えれば、少なくとも22歳までは経済的に自立できないことが通常であるともいえるのです。養育費の終期を決めるにあたっては、形式的に年齢のみをみるのではなく、子どもの進学見込みなど実際に子どもが経済的に自立できる見込みが立つときまでとするのが、養育費の本来の在り方であると思います。法務省においても、平成30年10月4日付けで出された「成年年齢の引下げに伴う養育費の取決めへの影響について」において、「養育費は,子が未成熟であって経済的に自立することを期待することができない場合に支払われるものなので,子が成年に達したとしても,経済的に未成熟である場合には,養育費を支払う義務を負うことになります。このため,成年年齢が引き下げられたからといって,養育費の支払期間が当然に「18歳に達するまで」ということになるわけではありません。」と指摘しています。我々が事件を扱う場合には、このような主張を行いながら、子どもが経済的に自立できるまでの終期となるように対応しているところです。
子どもの養育費をいつまで支払うのかということは、養育費の額と並んで争いになることが多い問題です。支払う側からすればできるだけ早く支払いを終えたいと考えることもあるのでしょうが、養育費は子どもの成長のために払われるものであるのだということを今一度確認しておきたいものです。