事案の内容
AさんはB社という中古車自動車販売業者から中古車を30万円で購入しました。ところが、購入してまもなく異音がするようになり、気になって購入したB社に修理を依頼しました。B社からは「特に問題はない」と言われたことから、様子を見ていました。その後車検の時期になり、ディーラーにもっていったところ、これでは車検が通らないといわれてしまいました。理由をきくと、ドライブシャフトに不備があり、修理が必要だとのことでした。Aさんは車検を通すために修理を依頼しましたが、この修理費用はB社に負担してもらえるのでしょうか。また、このほかにもヘッドライトが片方つかないなどの不具合もあり、ヘッドライトも交換してもらえるのでしょうか。
事案の解決
このような中古車の売買については、購入後に車に様々な不具合が発生し、問題になることが少なくありません。売買した物について不具合があった場合について、これまでは瑕疵担保責任の問題とされることが多かったものですが、このたび民法が改正されたことによって、今後は「契約不適合責任」の問題になるものと思われます(以下では改正後の民法を前提にお話しいたします)。
契約不適合責任とは、売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合には、買主は修理請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約の解除をすることができるとされるものです。今回の場合でも、B社に契約不適合責任を問えるような場合には、Aさんは修理費用を請求することができることになります。
Aさんが購入した車両の不具合は、ドライブシャフトの不具合でした。このようなドライブシャフトの不具合は、Aさんのような一般の消費者にはなかなか見抜くことができないものです。さらにドライブシャフトの不具合は自動車が安全に走行するためには致命的な問題になりえます。したがって、ドライブシャフトの不具合は「契約の内容に適合しない」ものとして修理費用相当額の損害賠償が可能であると思われます。
一方で、ヘッドライトがつかないという問題については、購入時にチェックすればAさんにも分かるものです(実際にAさんは購入時にライトがつかないことは把握していました)。このような場合には、Aさんはヘッドライトがつかないことを前提に購入したといえ、この点についての修理費用や交換修理請求をB社に求めることはできないことになります。
今回の事例ではAさんとB社との間では契約書が交わされていませんでしたが、一般には契約書が存在することが多いと思われます。契約書が交わされている場合には、原則として契約書に従って解決を図ることになりますが、契約書のなかには「売主は買主に対して一切の契約不適合責任を負わない」とする免責条項が記載されていることがあります。業者によってはこのような条項を盾に修理や損害賠償請求を拒むことがありますが、このような条項は消費者の利益を一方的に害する条項として無効になる可能性もあります(消費者契約法8条、10条)。事業者からこのような対応を受けた場合には、一度弁護士等にご相談ください。