事案の内容
A社はB社に対して、貸金がありましたが、期限を過ぎても返してもらえません。そこで、裁判を起こし無事に勝訴し、裁判は確定しました。それでもB社は裁判所で命じられたとおりの金額を払ってくれません。そこで、A社としては強制的にB社の財産から回収したいと考えていますが、目立った財産はないようです。困ったA社がB社について調査したところ、B社はCさんに対してお金を貸していることがわかりました。A社としてはこの債権を押さえたいと考えています。
事案の解決
B社の財産から強制的に回収する、いわゆる強制執行を行うためには債務名義と呼ばれるものが必要です。債務名義になるのは、確定判決、仮執行宣言付判決、和解調書、調停調書、仮執行宣言付支払督促、公正証書などがあります。今回は裁判で勝訴し、確定しているとのことですので、確定判決があることになり、債務名義が存在することになります。
今回のように判決まで出ているのに、それに従った履行をしないような場合には、強制執行を検討することになります。強制執行としては、不動産や預貯金などの財産をB社の意向にかかわらず強制的に取り上げて(処分して)債権者であるA社に配当する方法があります。今回は、不動産や預貯金といった財産が見当たらないことから、B社がCに対して有する債権を取り立てることができないかということを検討することになります。
このような執行を債権執行といいますが、この債権執行が実現すれば、A社はCから直接お金を取り立てることができるようになります。債権執行を行うためには、裁判所に申立てを行うことが必要です。裁判所に必要事項を記載して申立てを行い、裁判所から命令が出されると、まずCさんに裁判所から連絡がいくことになります。Cさんが裁判所からの連絡を受けてからは、CさんはB社に弁済を行うことは禁止されます。その後、裁判所からB社に連絡がいくことになりますが、B社があわててCさんからお金を回収しようとしても、既にCさんはB社に対する弁済を禁じられていますので、Cさんは弁済を拒むことができます。その後、A社はCさんから直接取り立てを行い、裁判で確保した権利の満足を受けることができます。もちろん、裁判で確定した金額以上の金額をCさんから回収できるわけではありませんが、今回は裁判で確定した金額の方が多かったことから、CさんからB社に対して支払うはずだった金額を全額支払ってもらうことができました。
この債権執行を円滑に実施するためには、Cさんのような立場の人(第三債務者といいます)の協力が不可欠です。第三債務者からすれば、突然裁判所や見ず知らずのA社のような債権者から連絡がくるのですから、困惑することが一般的です。債権者としては、第三債務者に対して丁寧に強制執行の手続を説明し、回収に協力してもらうことが肝要です。今回は、Cさんが強制執行の手続に理解を示してくれたことから、円滑に手続を進めることができました。
強制執行の手続は迅速性が求められます。手続きがうまく進まず悩んでいるうちに機会を逃してしまうこともありますので、お困りの際には早めに専門家に相談されることをお勧めします。