友人からビジネスで面白い話があると言われ、話を聞いてみました。友人によれば、「コロナ禍で直接にコミュニケーションをとることが難しい状況にあることから、これらのコミュニケーションを代替する業務がこれから伸びていく」「規模を大きくしていけば、それだけ儲けが出ていくことは間違いなく、いまは準備段階だが、いまのうちに出資しておけば将来利益が出たときに配当を受けられる」というものでした。出資額は40万円ということで、少し高いなとは思いましたが、とりあえず出資してみました。その後、出資した会社の中で将来配当を受けるためには一定のレベルに達している必要があると言われ、そのレベルを上げるために新たな出資者を集めることが求められました。せっかく出資したのに、将来配当受けられないのは困るので、友達や親族に声をかけて出資を呼びかけました。ところが、親族からは「それは詐欺だ」などと言われてしまい、不安になってきました。私は騙されているのでしょうか。
このような商法は、いわゆる「マルチ商法」と呼ばれるものである可能性があります。マルチ商法とは、販売組織に加盟して販売員となった者に販売活動をさせ、その下にさらに販売組織を作ることによって利益を得られるようにするビジネスのことをいいます。このマルチ商法には様々な形態がありますが、人口は有限ですので、いずれ紹介できる人がいなくなり、破綻することが明らかであることが問題です。販売員に商品などを販売させることを行っていることもありますが、最近では今回のように将来の配当をうたった出資詐欺のような形態も出現しています。
この商法は、利益を生み出すシステムが実現可能であるかどうかがキーポイントです。説明されているシステムが難解であったり抽象的であったりする場合には要注意です。このような場合、業者の本当の狙いは出資金そのものにあり、説明されているような業務を実際に行っていないことが多いのです。出資金を集められるだけ集め、実際には利益や配当を受けることができず、気づいたときには破綻しているということになりかねません。
業者からパンフレット等をもらっているのであれば、よく内容を確認してみましょう。その内容が理解困難で、配当についても当初約束されていた時期から延期されているなど、不審な点がみられる場合には出資を取りやめることをお勧めいたします。また、インターネットなどでこれらの業者の評判を調べてみることも有効です。
そもそも、「絶対に」儲かるビジネスなど存在しません。仮にそのようなビジネスが存在するのであれば、他人に教えたりするでしょうか。自分だけで確実に利益を独占しようとするのではないでしょうか。「うまい話」ほど恐ろしいものはありません。マルチ商法の恐ろしいところは、自分が騙されていたことを知ったときには既にたくさんの友人や家族を巻き込んでしまっており、これらの対人関係までも失うことになりかねないということです。お金だけでなく、大切な友人や家族との関係性まで失うことになってしまうのです。
このような話を持ち掛けられたら、本当に投資すべきシステムなのか、よく考えましょう。システムが自ら理解できないような場合には、投資を控えることをお勧めします。万が一詐欺商法の被害にあってしまうと、出資したお金を取り返すことは困難です。大きな出資をしてしまう前に、家族に相談するなどして冷静な判断が求められます。