実家だった場所の敷地(現況は駐車場)が公道の拡幅予定地に組み込まれたため買収に応じようと思っていましたが、買収された後の残地の面積が少なくなり、利用価値のない土地となってしまうため、残地ごとの買い上げを希望して、何年も経ってしまい、その間に担当者が何人も代わって協議が進まず、窓口になる行政機関に大変な不信感を持っています。
約5年前に上記のような相談を受けて、当事務所が売主の代理人として交渉窓口になりました。売主は、相手となる行政機関の担当者が数年で代わり、その度に対応が異なってしまうことに不信感を増幅させていました。また、残地が利用価値がなくなるにもかかわらず、公道の拡幅のためには不要ということで、残地を含めて買収する考えが行政機関にはありませんでした。
たしかに、公共目的のために公金を使用して買収するわけですから、公共目的の対象外である残地を公金を利用して買い取るとは行政機関も言えないことは理解できるのですが、売主の立場に立てば、公共目的のため所有地の一部を提供した結果、残地が利用価値がなくなるというのも耐えがたいことだと思います。
そこで、行政機関に対しては、利用価値がなくなる残地が価値を生み出すような対案を出して売主の納得を得られるよう努力を求めました。そうしたところ、行政機関はさすがに残地を買い取ることはできませんが、当該残地を含めた周辺地を一括して買取り活用する事業所を見つけ出してきて、その事業所に残地を売却できるようにする対案を出してきました。
売主からすれば、利用価値がなくなる残地を正当な価値で売却できる目処も立ったことから、公道の拡幅用地の買取と残地の買取の各手続が同時並行で進むよう要求して、ようやく敷地の売却が全体として完了しました。
公共用地として買収するにあたって、行政機関は強制収用という手段を持っていますが、今回は時間はかかりましたが、たまたま行政が事業所を見つけてきて、行政も売主もウィンウィンの関係で解決することができました。