先日、文部科学省が全国の小中高校などが2020年度に認知したいじめの件数が51万7163件で、前年度より15.6%減少したことを発表しました。いじめの認知件数が減少に転じたのは7年ぶりのことです。
いじめの認知件数が減少に転じた原因は、新型コロナウイルスの流行により臨時休校措置がとられるなど、子どもたちが学校に行く機会が失われていたことにあると思われます。学校に行くことがなければ、子どもたち同士の接触も減り、いじめられることもなくなるということです。学校現場のいじめが少なくなっていると安易に考えることはできません。
近年増加が懸念されているのがSNSを利用したいじめです。現代の子どもたちは小さいころからデジタル機器に親しみ、小学生でSNSを利用していることも珍しくなくなってきました。中学高校になると、大半の生徒がSNSを利用しており、大人である保護者がついていけなくなるほどです。このようなSNSは便利ですし、今回のコロナ禍のような直接交流ができない場合には有用なツールとなります。このSNSが子どもたちに浸透するにつれて、SNSを用いたいじめが行われることが増えてきました。
SNSによるいじめの特徴は、これまでの学校現場で起きていたいじめに比べ、見えにくく、陰湿なものになりがちです。学校でのいじめであれば、学校から離れればいじめから逃げることもできますが、SNSによるいじめの場合には帰宅してからもいじめが続くことになり、逃げ場がありません。また、SNSによるいじめは外部からは見えづらく、保護者や教師がいじめの存在に気付きにくくなっています。
また、文部科学省はGIGAスクール構想として学校現場において児童生徒に一人一台の端末を持たせようと準備を進めています。情報教育が必要なことはもちろんであり、そのためには一人一台の端末が確保されることは大変意義のあることだと思います。その一方で、これらの端末の正しい使い方を学んでいなければ、かえってSNSによるいじめを深刻化させる要因ともなってしまいます。これからSNSが子どもたちにとって身近になればなるほど、SNSによるいじめのリスクも高まっていきます。このことを保護者及び先生方が意識して子どもたちをみていかなければ、深刻ないじめが発生しかねません。
福島県弁護士会においても、このような問題意識から10月30日に郡山市内において「いじめのない明日へ」と題してイベントを開催しました。そのなかでは、いじめ問題に取り組むにあたっては、保護者、教員、行政、そして弁護士を含む外部専門家が協力していく必要性があることが確認されていました。当事務所も、子どもたちの明るい未来のために、この問題に関心を寄せ続けていきたいと思います。