配偶者暴力防止・被害者保護法(DV防止法)改正案が来年の通常国会で議論される見通しとなりました。改正案の内容は主に4点です。概略をご説明すると、①保護命令の対象に精神的暴力や性的暴力を加えること、②保護命令が出された場合に加害者によるSNSでのつきまといやGPSでの位置情報特定を禁止すること、③保護命令違反の懲役刑を厳罰化すること、④接近禁止命令の期間を延長することです。
DVを受けている被害者が加害者から身を守るために保護命令の発令を裁判所に申し立てる際、これまでは裁判所が保護命令を出せる対象が「配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫」を受けている被害者に限定されていることが問題となっていました。一口にDVといっても、殴る蹴るといった暴力だけでなく、最近では精神的に追い詰めるような方法(生活費を渡さない、どなる、長時間説教するなど)によるDVも増えてきています。内閣府によると、精神的なDVに関する相談が全体の6割を占めたとの報告もあります。このような精神的なDVや意に反する性的関係を迫るなどの性的暴力を加えられている被害者も保護命令の対象として保護すべきではないかとの考えが今回の改正の背景にあります。
さらに、保護命令が発令されると、加害者は被害者に対して面会を求めることや、電話・ファックス・電子メールなどで連絡をとることが禁じられることがあります。しかし、近時利用が進んでいるSNSや携帯電話のアプリ等を用いたGPS機能での位置情報取得についてはこれまで禁止の対象になるのか明確ではありませんでした。そこで、今回の改正で明確にこれらの行為を加害者がとることを禁止することができるようにしようとするものです。
このほかにも、保護命令の実効性を高めるために、保護命令に加害者が違反した場合、これまでは罰則が「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」とされていたものが「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金」とされ、厳罰化されました。さらに、保護命令の期間についても、これまでは6か月とされていたものを1年に延長する内容となっています。
今回の改正案は、来年の通常国会で議論される見込みであり、成立するかどうかは未定です。この法律が今後どのように議論されていくのか、国会審議を注意深く見守っていきたいと思います。