Aさんは12年前に生活費に困り、サラ金から50万円を借りました。その返済を一度も行うことができず、そのままになってしまっていました。ところが、サラ金業者から債権を引き受けたとする債権回収会社から最近連絡があり、利息を含めて100万円以上の支払いを求められました。Aさんとしてはとてもそのようなお金を準備することができなかったことから、当事務所に対応をご相談されました。
Aさんとサラ金業者との間のお金の貸し借りは、法律的には金銭消費貸借契約といいます。この金銭消費貸借契約は、サラ金業者などが貸主の場合には5年の消滅時効が定められています(ただし、本件は2020年民法改正以前の事例でした。現在、商事消滅時効は廃止され、貸主が会社かどうかにかかわらず時効は5年で統一されています)。したがって、Aさんはすでに時効期間の5年を大幅に超える12年間請求を受けていなかったのですから、時効が完成していることになります。時効が完成するには5年間経過していることはもちろん必須ですが、その間に①一部であっても支払うこと、②返済の意思を示すこと、③裁判上の請求を受けることなどがある場合には時効が完成しない可能性があります(このほかに時効中断事由がありますが、今回は省略しています)。Aさんの場合には、この12年間の間に一度も債権者から連絡がなかったことから、①及び②はありませんでした。また、裁判所から訴状が送られてきたこともないということでしたので、③の可能性もなく、時効が完成していると思われる事案でした。
そこで、弁護士がAさんの代理人として、債権者(債権回収会社)に対し、消滅時効が完成していることと、その時効を援用する(主張する)ことを明記した書面を内容証明郵便で送付しました。債権者からは特に反論がなく、無事に債務の支払いを免れることができました。
借金に関する時効はさきほど述べた①から③の事実がないまま5年以上が経過することで成立しますが、その効果を主張する(借金の支払いを免れる)ためには債権者に対して時効の援用(時効を主張すること)をしなければなりません。この援用の方法は特に制限はありませんが、債権者にきちんと到達したことを証拠化するために、配達証明・内容証明郵便で行うことが推奨されます。昔の債務について、債権者から連絡がきた場合には、時効が完成している場合があります。債権者に問い合わせをする前に、一度弁護士等にご相談されることをお勧めいたします。