私は恥ずかしい話ですが、万引きを繰り返してしまい、先日裁判所で「懲役6月執行猶予3年」の判決を受けました。万引きは二度としないと誓い、生活していたのですが、執行猶予の期間中に、免許の更新をするお金がなく免許の有効期限が切れた状態で車を運転し、無免許運転でつかまってしまいました。無免許運転の件についても裁判となりました。万引きの裁判のときには、裁判官から「今回は執行猶予をつけたので刑務所にはいかなくてよい。ただし、次になにか事件を起こしたような場合には執行猶予が取り消され、今回の罪と併せて相当長期間刑務所に行くことになるかもしれない」と注意されていました。やはり私は長期間刑務所に行くことになるのでしょうか。
執行猶予中に再び罪を犯してしまった場合、その執行猶予は取り消されることが多くなります。今回のような「懲役6月執行猶予3年」との判決の場合、執行猶予期間中である3年間の間にまた罪を犯し執行猶予が取り消されれば、執行が猶予されていた万引きの懲役6月を服役しなければならないだけでなく、あらたな犯罪(無免許運転)についても実刑判決を受ける可能性が高くなり、前回の6月と無免許運転の懲役期間の合計期間服役しなければなりません。裁判官が説諭していたこともそのことを述べています。
一方で、執行猶予中の再犯であっても例外的にもう一度執行猶予が付されることがあり、これを再度の執行猶予と呼んでいます。再度の執行猶予について刑法25条2項では「前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が1年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第1項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。」と規定しています。つまり、再度の執行猶予が認められるためには①今回犯した罪の刑が1年以下の懲役か禁錮にとどまること、②情状に特に酌量すべき点があること、③保護観察中ではないこと、ということになります。このうち、特に重要なのは②の「情状に特に酌量すべき点があること」という要件です。
一度執行猶予判決を受け、社会内での更生の機会を与えられながら、それをいかせなかったわけですので、通常の「酌量すべき」事情では足りず、「特に酌量すべき点があること」が必要になるのです。具体的には、被害者対応や社会貢献活動に従事したこと、高齢の家族と同居していて刑務所に入ることになると家族が困窮することになること、などが考えられます。また、前回の罪と今回の罪が全く異なるものである方が、再度の執行猶予が認められる可能性が出てくると考えられます(同じ犯罪を繰り返すような場合には特に酌量すべき点を強調することは難しいでしょう)。
再度の執行猶予は制度としては存在するものの、実際に適用された事例はかなり少数です。犯罪を起こさないことは当然ですが、執行猶予期間中は特に気を付けて生活しなければなりません。