私には中学生になる子どもがいます。先日私のクレジットカードの利用料金の請求がきたのですが、いままでに見たことのない高額になっていました。心当たりがなかったことから、子どもを問い詰めたところ、私のカードを使って買い物をしていたことがわかりました。とりあえず子どもが購入した商品を返して代金の支払いを免れたいと思い、業者に連絡したところ、「お子さんは「18歳以上です」というボタンをクリックして買い物をしているので、契約は取り消すことができません」という対応をされていまいました。業者のいうように取り消すことはできないのでしょうか。
未成年(令和4年4月1日からは18歳)のうちに行った契約については、親権者である保護者において後日取り消すことができます。日常的な少額の買い物やお小遣いを使うといった低額の取引であれば未成年者であっても単独で行うことができますが、一定の高額の取引になると親権者の同意が必要とされています。親権者の同意なく取引した場合には、親権者が無条件で取り消すことができるとされているのです。
今回の事例では、高額のクレジットカード利用ということですので、親権者の同意を要する行為であると考えられます。さきほど申し上げたように、親権者の同意なく未成年者が行った契約は、後日親権者において取り消すことができるのが原則です。ただし、例外的に取り消すことができない場合があります。それが今回問題となる「詐術を用いた場合」です。つまり、民法21条において「制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができる」と規定されており、年齢を偽ったことがこれに該当するのではないかという問題です。
この点については古い判例ですが、民法21条にいう「詐術」とは積極的詐欺手段を用いることをいい、単に無能力者でないことを相手方に通知し、または無能力者であることを告げなかっただけでは詐術とはいえないと判断しているものがあります。今回の事例のように、「18歳以上です」というボタンをクリックしただけでは、積極的詐欺手段を用いたとまではいえないと思われますので、取消しが可能であると考えられます。ボタンをクリックするだけでなく、偽の身分証明書を提示するなどした場合には、積極的詐欺手段を用いたと評価されてしまう可能性はありますが、単に成人であると伝えただけでは未成年者取消権は制限されないと考えられます。