事案の内容
Aさんは仕事のスキルアップを図ろうと考え、インターネットでみつけた講座を申し込むことにしました。その講座は新型コロナウイルス感染拡大予防の観点から、オンラインで実施されることになっていました。Aさんが申し込みを行うと、講座主催者から「後日オンライン接続先のメールをお送りします。当日は時間になったら、そのメールを開いて講座に参加してください」という説明を受けました。
Aさんは料金を支払い、メールを届くのを待っていましたが、当日になってもメールが届きませんでした。不安になったAさんは主催者に問い合わせを行いましたが、連絡がとれず、結局Aさんは講座を受講することができませんでした。主催者からは後日「通信トラブルが発生した」と説明されました。Aさんは料金の返金を求めましたが、主催者からは「通信トラブルは自分たちの責任ではないので、返金には応じられない」という対応でした。そこで主催者への返金を求めるべく、ご相談にお越しになりました。
事案の解決
新型コロナウイルスの感染拡大により、オンラインによる講座などが急速に広まりました。オンライン講座は遠方の会場に足を運ぶことなく自宅等で気軽に受講できることもあり、利用される方も多いと思います。しかし、オンラインでは通信トラブルによって講座を受講できないといった事態も想定され、そのような場合に支払った受講料がどうなるのかが問題となります。
このようなオンライン講座を申し込む場合には、主催者側が規約等を作成していることが一般的です。その規約のなかに、通信トラブルが発生した場合の対応について定められていると思いますので、そのような規約が存在する場合にはその規約にしたがって解決を図ることになります。ところが、今回のAさんの場合にはそのような規約がない状況でした。
そこで、主催者側と交渉をすることになりますが、今回の場合は①主催者側がAさんに送ると約束していたメールが届いていないと思われること(主催者側は送ったと主張していますが送信履歴などの裏付けは取れませんでした)、②Aさんが当日問い合わせを行った際に電話のコールは鳴っている(通信トラブルは発生していない)のに誰も電話をとってくれなかったこと、③主催者側において通信トラブルが発生した場合の対応方法について検討していなかったことなどを根拠に返金を求めました。主催者側は当初は返金を拒んでいましたが、最終的には全額の返金に応じてくれることになりました。
オンラインを用いたサービスが浸透していくなかで、今後このようなトラブルは増加するものと思われます。申し込みの際の規約が大事になりますので、主催者側になる場合には規約をきちんと作成すること、受講者側になる場合には規約をきちんと確認することが必要になります。