事案の内容
AさんはBさんに対し、裁判を起こし、1000万円の支払いを命じる勝訴判決を得ることができました。この裁判は控訴されることなく確定したことから、AさんはBさんから1000万円を取り立てようとしましたが、Bさんは不動産や預貯金といった財産はないようで、回収が難しい状況でした。そこで、AさんはBさんが何か回収できそうな財産を持っているかもしれないと考え、動産執行を検討しました。
事案の解決
金銭的請求について、裁判で勝訴したとしても、その金額を回収することができるかどうかは、実務的には非常に大きな問題です。交通事故の保険会社のように、回収について心配しなくてもよい場合もありますが、今回のように個人を相手にする金銭的請求の場合には、裁判で勝ったとしても実際に金銭を回収できるのかということを考えなければなりません。
相手が裁判の結果に従って任意に支払を行わない場合には、強制執行を考えることになります。強制執行はなにを対象とするかによってさまざまなタイプが考えられます。代表的なものとしては、不動産の競売、預貯金の差押え、給与の差押えなどがあります。このうち、不動産の競売と預貯金の差押えは不動産や預貯金を持っていなければ意味がありません。給与の差押えについては職場を調査する必要が出てきます。
今回はBさんに目立った不動産や預貯金が存在しないうえ、Bさんの勤務先も不明な状況でした。そこで、Bさんの持っている所持品や現金などがないかどうかを探るために行ったのが動産執行でした。
動産執行とは、現金や貴金属、高価な品物などを対象とした強制執行手続きです。債務者(今回ではBさん)の自宅に直接執行官が訪問し、債務者の所有している現金や貴金属、高価品などを持ち帰るものであり、債務者に対する衝撃は大きいものがあります。一方で、債務者が現金等を持っていなかったり、債務者の所有であることが断定できなければ、執行は空振りに終わることになります。
今回の件では、Bさんは親族の家に住んでいたこともあり、執行官はBさんの部屋だけを調査しました。その結果、Bさんの部屋にはめぼしい財産はありませんでしたので、執行の結果としては失敗に終わりました。ただし、場合によってはこの動産執行の結果、Bさんの勤務先が判明したり、預貯金の存在が明らかになるなどして、他の執行手続きの手がかりが入手できることもあります。今回はうまくいきませんでしたが、この動産執行によって道が開けることもあるのです。