Aさんは自動車を運転中、一時停止のある交差点に差し掛かりました。一時停止に従い、停止したところ、右側から自転車がやってきた自転車が転倒してしまいました。自転車はAさんの車に少しぶつかりましたが、大きなへこみ等はありませんでした。Aさんは念のため運転席から降り、自転車の運転手に「大丈夫ですか」と声をかけましたが、転倒したことが恥ずかしかったのか、自転車の運転手は「大丈夫です。私急いでいるので、これで」といって走り去ってしまいました。Aさんの対応は問題なかったのでしょうか。
交通事故が発生した場合には、交通事故の当事者は負傷者の救護と,事故を警察や保険会社に連絡する必要があります。これらの対応を怠ると、道路交通法違反に問われたり、保険金が支払われなかったりしますので、注意が必要です。
今回の事故のように、相手方が大丈夫だと言っても、その後大きなけがをしていることがわかることもあります。事故直後は興奮状態にあるため、傷みに気づかないこともあります。また、頭部や首などを痛めた場合には後日症状が出ることもあります。事故の相手方が軽傷に見えたとしても、念のため警察などに連絡し、臨場してもらうことが必要です。警察を呼ばずに終えてしまうと、後日事故が発生したことを証明することができなくなる恐れがあります。それだけではなく、被害者の家族などから「(警察を呼ばずにそのまま分かれるとは)ひき逃げではないか」などと疑われてしまうことにもなりかねません。トラブルを防ぐ意味でも、(特に人身の場合には)警察への通報をしておくことをお勧めします。
どうしても相手方が警察が着くまで待ってくれないような場合には、相手方の連絡先だけでも聞いておくことや、自分だけでも警察に通報しておくことがよいと思います。警察に申告し、事情を説明しておけば、ひき逃げ等の嫌疑をかけられることもないでしょう。
昔からあるトラブルとして、交通事故の被害者が「軽傷だから大丈夫。警察は呼ばないで。また後で連絡します」とその場を立ち去り、後日重傷だったとして不当な金額を請求してくるというものがあります。警察が臨場していれば、事故の内容はある程度記録化されますが、警察が臨場していなければ事故そのものの発生を証明することが難しくなります(目撃者などがいれば別ですが)。このようなトラブルを避けるためにも、Aさんの事故のような一見小さな事故にみえるものであっても、通報報告はきちんとしておいた方がよかったと思います。