昨今、SNSなどを通じて「必ず稼げる」「高額収入」と謳い、お金欲しさに集まった者を強盗に加担させ、被害者の方に怪我を負わせたり、死なせてしまう事件が全国各地で発生しており、「闇バイト」などとして世間を賑わせています。福島県内でも強盗に押し入られた被害者が重症を負う事件が発生しており、「闇バイト」として行われた犯行と考えられています。このような事件に関与した場合、加害者側はどのような責任を負うことになるのでしょうか。
暴行や脅迫を用いて他人の財産を奪った場合、「強盗罪」に当たり、「五年以上の有期懲役」の刑罰が科せられます(刑法236条1項)。暴行により相手に怪我をさせた場合には「強盗致傷」として「無期又は六年以上の懲役」の刑罰が、相手を死なせてしまった場合は「強盗致死」(故意に死なせた場合は「強盗殺人」)として「死刑又は無期懲役」の刑罰が科せられることになります(刑法240条)。強盗致死(強盗殺人)については、科せられる刑が「死刑」と「無期懲役」に限られており、これらの犯罪が刑法上の犯罪の中でも極めて重い部類に属することが分かると思います。
犯罪に関与した場合でも、事情によっては執行猶予が付され、ただちに刑務所で刑に服すことなく、社会で引き続き生活できる場合もありますが、強盗や強盗致傷、強盗致死(強盗殺人)の場合は、法律に定められた刑罰が重いため、初犯であっても原則として執行猶予は付されず、刑務所にて刑に服することになります。強盗致傷、強盗致死(強盗殺人)の場合は、裁判員裁判によって刑を決めることになりますが、裁判員裁判は審理が行われるまでにある程度の時間を要することが通常ですので、逮捕・勾留されている場合は身柄拘束の期間が長期間に及ぶ可能性もあります。
例えば現場までの運転手に過ぎなかったなど、強盗について直接の実行役ではない場合でも罪を免れるわけではありません。役割の内容、大小によっては、犯罪を手助けした「ほう助」として直接の実行役より罪が軽くなる場合もありますが、事情を知りながら犯罪に加担した場合には、犯罪の「共同正犯」として直接の実行役と同等の罪を負う可能性が高いでしょう。対価として金銭を得ている場合はなおさらです。
当然ながら、後に被害者の方(被害者の方が亡くなっている場合にはその遺族)から莫大な賠償請求を受ける可能性もありますので、安易な気持ちで「闇バイト」をしてしまうと、極めて大きな代償を払うこととなります。
「必ず稼げる」などと謳う誘い文句には必ず裏があり、高いリスクが伴うものです。このような強盗事件に限りませんが、犯罪に加担することは絶対にせず、困りごとがあれば、まずは周囲の家族・友人や弁護士などの専門家に相談することを考えてみてください。