約10年前に、父が所有していた不動産を相続により取得しましたが、その不動産には父がかつて経営していた会社を債務者とする極度額2000万円の根抵当権が設定されていました。設定登記がなされたのは父が亡くなる10年以上前の日付になっていますが、その会社はすでに倒産して廃業しています。根抵当権者となっている会社は、どういう会社か分からない会社であり、おそらく街金業者ではないかと思いますが、この根抵当権の設定登記を抹消することは可能でしょうか、という相談を受けました。
上記の相談の趣旨からすると、根抵当権が設定されたのは20年以上も前の出来事のようですが、お父さんが亡くなる前にはお父さんが経営していた会社も倒産していますので、仮に根抵当権者からお金を借りていたとしても、少なくとも10年以上も前の出来事と思われます。そして、その借入金はお父さんが亡くなった後も権利行使がなされた形跡はありませんので、残債が残っていたとしても時効で消滅してしまっていると考えられます。
他方、根抵当権者の会社は、調査しますと現在も存在しており、事業を営んでいるようでした。そこで、その会社に連絡して根抵当権の抹消に協力してくれるか問い合わせたところ、協力する条件として相当額の金銭を要求してきました。しかし、この根抵当権で担保されている債権は、仮に存在するとしても時効で消滅していることが予想されたので、根抵当権の抹消に必要な費用に少しだけ上乗せした金額を提示したところ、根抵当権者はより多額な金額を要求してきました。
しかし、本件の根抵当権は、訴訟を提起して抹消登記を請求すれば勝訴する可能性が十分あったため、根抵当権者の要求額の支払を拒否したところ、相手は諦めて、最初に当方が提示した金額の支払いを受けることで、根抵当権の抹消に必要な書類を交付してきました。
訴訟を提起した場合のコストと比較しますと、少ない金額を支払うことで早期に根抵当権の抹消登記を実現できました。古い時代の担保権が登記されたままになっている不動産があれば、一度弁護士に相談してみるとよいかもしれません。