福島県内の男性から、養子縁組の解消についての相談を受けました。その相談者のお話によると、今から30年以上前に結婚した際に、相手の女性のお子さん(当時小学校5年生)を養子縁組して養育したとのことでした。そのお子さんは大学に進学して卒業し、現在は会社員として関東方面で就職して生活しているとのことです。
その間、結婚した相手の女性は亡くなり、相談者は一人で生活していますが、関東方面で生活している養子とは、東日本大震災のころから疎遠になり、電話をかけても出てくれず、手紙を送ってもなしのつぶてだったので、5~6年ほど前に養子の居住しているアパートを訪問したものの部屋にも入れてもらえず、「話がない」ということの一点張りで、親子としての関係性を復活させることが出来なかったということでした。
相談者は,その後も電話をかけたり、養子縁組を解消するために離縁届の用紙も送りましたが、養子からの連絡はなく、時間ばかりが経過したため、当事務所にご相談にお見えになったのでした。
当事務所では、相談者に養子縁組を解消する考えに変わりはないか確認した上で、まずは弁護士名で離縁届を送付して協議離縁をすることを養子に提案しました。このとき、養子からの応答がなければ家庭裁判所に調停申立することも含みに入れて提案しました。すると、養子から、意外にも離縁届に署名押印した上で用紙が返送されることになりました。
離縁届の用紙が返送される見込みはうすいと判断していたのですが、返送されてきたので、これをそのまま市役所に提出すると、養子の氏が縁組をしたときの直前の氏に戻ってしまいます。そうすると、30年以上にわたって、現在の氏を使用してきた養子の氏が変わってしまいますので、あらためて、離縁の際に称していた氏を使用するかどうか確認するために連絡をとったところ、現在の氏をそのまま称するということでした。そこで、そのための届出を提出してもらい、離縁届と一緒に市役所に提出し無事離縁することができました。
養子縁組をすれば、養子は養親の氏に変更になりますが、離縁すると本来は元の氏に戻ってしまいます。しかし、長年にわたって養親の氏で生活を送ってきた養子は、その氏が定着しているので、急に30年以上も前の氏に戻ってしまうのでは支障が出て来かねません。そこで、法律は、縁組したあとの氏のままで生活していくことができるように制度を設けています。