ある日、依頼者様に電話がかかってきて、「法律で決まったので」「大手通信事業者の扱うある機器」を設置する義務がありますと言われました。
依頼者様は「法律で決まった」と言われたのでそれが必要なのだと思い、早く早くと急かされるまま先方の訪問を受け入れ、先方の言うまま急いで契約書に記入し、印鑑を押しました。
締結した契約は、総額100万円を超える通信機器のリース契約でした。
冷静に客観的に見れば、どう考えてもそんなものいりません。
依頼者様は高齢で仕事一筋、ITとかよくわからない。
とにかく考える暇を与えないのが、たちの良くない訪問販売業者の特徴です。
ご家族の方が気付いて、特定商取引法に基づくクーリングオフを申し出ましたが、先方の業者は「クーリングオフは認めません。」と述べるばかりです。
困ってしまって、当事務所にご相談にお見えになりました。
当事務所では、この契約書が、訪問した会社(販売会社)・リース会社(所有者)・依頼者様(利用者)の三面契約になっていたことから、販売会社及びリース会社に対して内容証明郵便を送付し、
・当該機器を当該大手通信事業者が販売する事実はなく、通信契約を維持するために当該機器を購入設置しなければならない義務もないことから、詐欺(民法96条1項)により本件契約を取り消すこと
・本件でクーリングオフができないとする理由はないこと
・いずれかでの契約の効果の覆滅を認めないのであれば、民事上の損害賠償のほか、刑事上も詐欺罪等で刑事告訴すること
といったことを指摘しました。
すると、リース会社から早速連絡があり、今回の契約はキャンセルにするということになりました。
今回はうまくいきましたが、契約はいったん成立してしまうと後からそれを覆すのが難しくなることがあります。ハンコを押す「前」にご相談いただくのが一番ですが、ハンコを押してしまった「後」でもお早めにご相談ください。