様々な紛争が話し合いによって決着した場合、今後の紛争予防という観点から書面による「和解書」「合意書」「示談書」などが作成されることが多いと思われます。各書面には、紛争当事者が合意した内容が盛り込まれることになりますが、そのなかに口外禁止条項というものがあります。
口外禁止条項というのは、決着した内容をみだりに他人に話したりしないということを約束するもので、たとえば「甲と乙は、本件紛争の経緯及び本和解条項の内容を、正当な理由なく第三者に口外しないことを相互に約束する」などというものです。「正当な理由なく」とされるのは、和解にしたがって様々な手続を行う際に、関係機関に和解内容を知らせなければならないことがあるからです。このような必要性もなく、友人知人やSNS上などで和解内容を暴露することは、口外禁止条項違反となる可能性があります。
口外禁止条項に違反した場合、そのことによって相手方に損害が発生した場合には、その損害賠償を別途行わなければならないことになります。和解書のなかに口外禁止条項に違反した場合の制裁を規定することもありますが、そのような規定がなくても、口外禁止条項違反によって相手方に損害が発生したと認められれば、損害賠償の責任を負うことになります。
なお、和解書で口外禁止条項を定めていなくても、特に必要性もないのに和解内容を暴露したような場合には、損害賠償責任を負う可能性もあります。
紛争をかかえているということは、他人に知られたくないことが多いと思われます。解決したからといって、安易に第三者に和解内容をお話するようなことは控えるようにしましょう。