A社は、約20年前に自社所有の土地につき不動産開発会社B社に賃貸し、B社はこの借地上に5棟の建物を建築して分譲しました。建物の買主は地代をB社に支払い、B社はその中からA社に対する地代を支払うという形を取っていました。
しかし、B社は約15年ぐらい前にA社に対する地代を長期間滞納したためA社はB社との土地賃貸借契約を解除し、5棟の建物所有者のうち4棟の建物所有者との間で直接に土地賃貸借契約を締結して地代を支払ってもらうようにしました。
他方、最後の1棟の建物所有者は他にも債務があり、当該建物は裁判所の競売手続によりC社が競落して新たな建物所有者となりました。このため。A社はC社との間で新たな土地賃貸借契約を締結するよう交渉しましたが、C社は交渉には応じつつも契約条件について折り合いがつかず数年が経ってしまった経緯があり、当事務所にご相談に来られました。
上記のケースによれば、A社とC社との間には、C社が競落した建物の敷地の利用権については何ら設定されておりませんので、C社は土地の使用権原がない状態で建物を所有していることになります。したがって、土地を不法占拠していると評価されてもやむを得ない状態にあることから、当事務所ではC社を相手に建物収去土地明渡の訴訟を提起しました。すると、第1回の裁判期日の2週間くらい前にC社から連絡があり、土地賃貸借を締結することで和解したい旨申し入れてきました。このため、A社は他の借地人と同様に契約条件を提示してC社と契約し、さらに契約前の1年分に限って不法占拠による地代相当分の損害金を賠償してもらうことで解決しました。
急転直下の解決となったわけですが、契約交渉がスムーズにいかないときは弁護士に相談しながら進めると早く解決できる典型例だと思います。