事案の内容
Aさんは、長年にわたって駐車場として利用してきた土地について、最近不動産登記簿を確認する機会がありました。すると、自分の土地であると思っていた駐車場の土地の所有者のところに、知らない人の名前が記載されていました。Aさんとしてはきちんと自分の名義にしたいと考えていましたが、方法がわからず、そのままにしていました。先日相続登記義務化のニュースを聞き、自分もきちんと登記をしなければならないと思うようになり、当事務所を訪れました。
事案の解決
この案件では、登記簿上所有者の欄にBという名前の記載はあるものの、所有権保存登記はなされていませんでした。そしてBという名前のみが記されており、住所なども不明という状況でした。
Aさんは20年以上にわたってこの土地を自分の土地と信じて利用していたので、時効による取得が考えられます。Bさんと連絡がつくのであれば、Bさんに対して取得時効が成立することを主張し、Aさんの所有権保存登記をすることになります。時効取得についてBさんと争いになれば、Bさんに対して裁判を起こすことになります。
ところが、今回はBさんの所在が分かりません。Bさんの名前からするとかなり昔の方のようで、生存されているかどうかもわかりません。住所や生年月日がわかれば、戸籍などを取得して調査することができるのですが、名前だけではそのような調査も進みません。そうすると、Bさんと交渉することは困難であり、裁判を起こすことになります。
しかし、ここで大きな問題になるのはBさんの所在が不明であるということです。裁判を起こす場合には、被告となる相手方の住所を調査して特定しなければなりませんが、今回はそれが困難でした。そこで、今回はBさんの所在が不明であること、所在調査が困難であることを裁判所に説明し、裁判所において「公示送達」という送達方法をとってもらうことにしました。この公示送達とは、一定の期間(今回は数週間でした)が経過すると、裁判所が所定の場所に訴訟を起こされていることを掲載することによって「送達」がなされたことにするというものであり、裁判を進めることができるようになります。
第1回の裁判では、Bさんは当然のことながら不出頭でした。これにより、裁判所はAさんの訴えをBさんが争わないものと認め、こちら側の請求通りの判決を出してくれました。これをもって、無事に不動産の所有者欄にAさんの名前を載せることができました。
最初にご相談いただいてから、解決に至るまで半年程度かかりましたが、これまで長い間懸案であった事項が解決したことで、Aさんはとても喜んでおられました。