平成13年に結婚した夫婦ですが、翌年に長女が生まれました。夫は、当初は真面目に働いていましたが、そのうち無断外泊や子育てに非協力的になり、仕事もクビになるような生活になり、妻が生活費を賄うため残業も厭わず働いていました。平成15年には、福島県外の妻の実家近くのアパートに家族で引越して生活するようになりました。しかし、夫は次第に帰宅時間も遅くなり、パチンコやスロットにのめり込んだり、妻に暴力を振るうなどしたため、平成18年7月、妻は長女と一緒に妻の実家に別居しました。
ところが、夫は、同月末、妻の実家に上がり込み、力ずくで長女を奪い、福島県内の実家に連れて行ってしまいました。このとき、長女は4歳になっていました。妻は、すぐに夫の実家に行き,長女を引き渡すよう求めましたが、拒否されました。
そこで、このケースでも、当事務所では審判前の保全処分の申立を行い、長女を仮に引き渡すよう求め、裁判所もこれを認める決定を出してくれました。ところが、夫はその決定に従わないため、やむを得ず長女の引渡を求める強制執行の申立をし、裁判所の執行官に夫宅に行ってもらい、自主的に長女を引き渡すよう話してもらいました。しかし、執行官の説得にもかかわらず、夫は長女の引渡に応じませんでした。このため、強制執行の申立も執行不能という結果に終わってしまいました。長女が連れ去られてから約4ヶ月が経過していました。
さすがに、長女の引渡は厳しいかと思いましたが、長女の監護者を妻に指定して引渡を認める審判書が程なく出されたため、この審判により間接強制の申立をしました。これは、長女を直接強制的に引き渡させることは難しいのですが、夫が引渡を実行しない場合は1日あたり3万円を支払えと命ずることにより間接的に長女の引渡を促すという方法です。この申立をした結果、夫は妻に対して長女を引き渡さざるを得なくなりました。ようやく、力ずくで連れ去られた長女が母親のもとに戻ることができました。
なかなか、思惑どおりに進んでいかないこともありますが、最後まで諦めずに力を尽くすことで、よい結果を導き出せた好例だと思います。