平成22年に結婚した夫婦ですが、翌年に長女が生まれました。夫は、結婚当初から妻に対し給与額を教えず、生活費を一切渡していませんでしたが、それは長女が生まれても変わらず、生活費のみならず長女に関するお金を一切出しませんでした。さらに、育児にも非協力的で、長女の存在が疎ましいというような態度をとり続けていました。そして、長女誕生を機に夫婦のマンションに同居するようになった義母と共に、妻を一方的に非難するようになりました。
他方、同居する義母は、同居直後から夫婦のマンションでの滞在費を妻に負わせたうえで、母親である妻の育児に過度に干渉して、妻の人格を否定し、一方的に非難することを繰り返していました。また、妻を差し置いて長女の世話をするようになりました。ひどい時には妻が長女を抱っこしているにもかかわらず、無理やり妻の手から長女を取り上げ、自分の部屋に連れて行き、そのまま長女を妻の元に返さないこともありました。
そのような生活を送る中で、長女が生後6か月を過ぎたころ、義母から長女を夫の実家に連れて行くという話ができました。その日を境に、義母は夫の実家に戻ったものの、長女を連れて行ったまま妻に返しませんでした。妻は、すぐに長女を引き渡すように求めましたが、拒否され続け、泣く泣く当事務所に来所されました。
そこで、当事務所では長女の監護者の指定を求める審判の申立とあわせて、審判前の保全処分の申立、長女との面会を求める調停を同時に申し立てました(ちなみに、離婚調停は、妻が当事務所にご相談に来所される前に、申立をしていました)。
申立から約1か月後、裁判所も長女の監護者を妻とすることと、長女を妻に引き渡すことが相当であると判断し、仮の監護者の指定および長女の引き渡しを認める決定を出してくれました。その後間もなくして、夫にも弁護士が代理人として就き、夫や義母を説得し、任意で長女を妻の元に返してもらいました。当事務所では、長女が妻の元に引き渡されたことから、面会を求める調停を取り下げました。
その後も、監護者の指定を求める審判事件と離婚調停は係属していましたが、長女が妻に引き渡されて以降、夫が求める長女との面会に妻が応じていたことから、夫の態度も軟化し、5か月後、無事に離婚が成立しました。
このように、夫が妻から子どもを連れ去るという事案もあれば、夫の親が孫を可愛がるあまり、一線を越えて、子どもを連れ去って我が子のように育てようとすることもあります。このケースでは、長女が義母に奪われてから妻に引き渡されるまで4か月が経過していましたが、その4か月の間に、長女は丸々と太り、生後10か月でありながら体重12キロにまで達していました。なお、生後10か月の女児の標準的な体重は7~9.5キロであり、この頃になるとハイハイはもちろん、つかまり立ちが出来る時期です。それが、長女は12キロという体重のせいか、寝返りさえできない状態でした。この状況は、義母の監護がいかに不適切だったかを何より物語っていたと思います。