郡山市では,昨年12月に、「郡山市建築物等における物品の堆積による不良な状態の適正化に関する条例」,いわゆる,「ごみ屋敷対策条例」が施行されました。
ごみ屋敷とは,その名の通り,大量の家庭ごみなどをその敷地内に放置している住宅のことを指す言葉です。テレビなどでも度々取り上げられるこの問題ですが,郡山市も例外ではなく,市内のごみ屋敷の問題が何度も取り上げられており,現在でも数か所のごみ屋敷が存在しています。
ごみ屋敷は,景観を損ねるのはもちろんのこと,悪臭,害虫の被害があるほか,火災発生の危険性も高く,周辺住民の健康や生命を脅かしかねない重大な問題です。
個人の敷地内にある物は,その人が管理しているものですから,自治体が許可なく敷地内に立ち入り,物を処分することは,法律の根拠なくしては許されないことです。これまで市は,ごみを片付けるよう家主に対して根気強く指導する,条例を改正してごみ集積所からのごみの持ち出しに対する罰則規定を設ける,などの対策を講じてきましたが,家主が片付けを拒めばそれ以上の手出しはできず,十分な対策とはなっていませんでした。
そのような状況下で制定された本条例の大きな目玉は,行政代執行,つまり,市によるごみの強制撤去を可能とした点にあります。
今回制定された条例によると,市は,立ち入り調査などを経て,その敷地のごみ等の状態から,周辺の生活環境に影響を及ぼしていると判断した場合には,その状態を発生させた家主に対して,片付けなどの措置を講じることの指導・勧告を経た上で,命令を行うことができます。この命令にもかかわらず改善が見られなければ,住所・氏名の公表や,市または市から委託を受けた業者が,家主に代わってごみを強制的に撤去するなどの代執行の措置を講じることができます。
今回の条例制定で,市のごみ屋敷問題への対策は強化されました。しかし,代執行が家主の意思に反して行われる最終手段である以上,その運用には慎重であるべきです。市や業者がごみとそうでないものの区別をどう判断するのか,という問題もあります。今後,条例の適正な運用を求めていく必要があります。
また,ごみの撤去のみでは問題の解決にはなりません。本条例では,周辺の生活環境の安全確保に主眼が置かれていますが,ごみを溜め込んでしまう当人に対してどのような支援が必要なのかという観点からも,この問題に向き合う必要があります。