犯罪被害者の保護を求める世論を受けて,2008(平成20)年に刑事訴訟法などが改正され,犯罪被害者が刑事事件に参加して証人尋問や被告人質問をしたり,意見を述べることができるようになりました(被害者参加といいます)。被害者参加ができる事件は,「故意の犯罪行為により人を死傷させた罪」などに限られますが,ご相談のケースでは,被害者参加は可能です。被害者参加は,検察官に参加の申し出をし,裁判所が参加を認める決定をした場合に認められます。被害者は,公判期日への出席,証人尋問,被告人質問,被害事実や量刑などについての意見陳述などをすることができます(これらの全部でなく一部のみをすることも可能です)。被害者参加をする場合に,弁護士を「付添人」として依頼することもでき,その費用についても国が負担する「国選付添人」の制度を利用することができる場合もあります。
賠償については,直接の交渉や裁判も考えられますが,ご相談のケースなど一定の事件については,刑事事件に引き続いて損害賠償命令を利用することも考えられます。刑事事件の弁論終結前に,刑事事件が係属している裁判所に損害賠償命令の申立をすることにより,刑事事件の判決宣告の後,これに引き続いて損害賠償の審理がなされ,裁判所の命令を得ることができます。通常の民事訴訟に比較し,申立費用が格段に低く,刑事裁判での証拠をそのまま利用できるなど,手続が簡便迅速です。加害者に財産や収入がない場合,裁判などを行っても十分な賠償を受けられないことも多いのですが,殺人や傷害などの事件については,被害者や遺族に対して,国から犯罪被害者給付金を受けることもできます。犯罪被害者給付金については,警察が窓口を開設しています。
こうした犯罪被害者保護の制度の利用などについては,日本司法支援センターが被害者保護に精通した弁護士の紹介を行っていますし,民間の被害者支援団体もありますから,法テラスや支援団体などに相談するとよいでしょう。